第36話 血の行方

   ~~ 大きさ ~~


 自称、花嫁候補のザビが山小屋にきても、特に変わったことはない。フィア、ルゥナ、ミズクとは仲良くやっているし、ザビがそれに文句をつけることはない。

 ザビは実力で正妻の座を奪う、というぐらいだし、愛人もみとめている。ただし、ボクが一人を特別視しない、という部分で対立するだけで、それ以外のことに関しては齟齬がない。

 だからザビが眠りについた後は、四人で楽しむことにしている。

「フィアも大分、胸が大きくなったね」

「いつも大きくなるよう、協力してくれるから……あん♥」

 エドリーがいると、反則的なぐらいなので目立たないけれど、フィアのそれも片手では収まらないほどだ。しかも彼女が汗ばんでいると吸い付くように密着度も高くなり、弾力もあって、何より形状がお椀型で手に馴染む感じなのがいい。

「ずるいのん! 私も、大きくなりたいのん!」

 成長の早い獣人族のフィアと、遅いエルフ族のルゥナ。しかも恐らく元々、スレンダーな体質らしく、成長如何に関わらず胸は小さいまま。だから悔しがる。ボクの手を引っ張って、揉めと言わんばかりだ。

 でもそうすると、まだ幼いために胸が大きくないミズクも、自分も……とばかりにボクの手をひく。


「胸を大きくする魔法ってないの?」

 ミズクからそう言われ、人族にはドミネートがつかえるので、できるかも……と考えた。ただ、人族にしか効果がないし、獣人族であるフィアと、ミズクでは難しいだろう。それに、そんなことで大きくしたって、良いことは何もない。

 だから「二人ともおいで」と、左右に背中をむけてすわらせ、ボクが横からその胸を優しく刺激する。揉むと、脂肪が燃焼してしまう……と聞いたことがあるので、あくまでその中心の突起から、その周りを徐々に責めていく。いつもより優しく、焦らす感じなので、二人とも身悶えしてよがる。

 その真ん中に寝転んだフィアを、ボクは突き上げる。激しく突くと「くぅ!」と彼女は小さな声を漏らし、そのたびに胸がホップする。

 そんなフィアの胸を見ながら、ルゥナとミズクのまだ拙い胸を責めていると、その大きさが伝染する……?

 そんなはず、あるわけない。でも、フィアと出会ったときは、まだ小さかったことを思うと、今指先で小さな乳首をつんと立て、乳輪すらふくらませて感じていることを示す、ルゥナとミズクだって、いずれこの手に余るほどになるのかもしれない。こうして毎日、彼女たちとしてあげていれば……。




   ~~ 鬼畜以上の所業 ~~


 ギルドからマッシュルーム通信がきた。久しぶりの仕事だけれど、依頼内容は少々変わっていた。

〝サン・バルラの貴族の暗殺

 ただし、本人ではなくその妻を殺すこと〟

「妻が諸悪の根源、ということ?」

「サン・バルラといったら、バルラ教のところね」

 ネルは何かピンと来たようだ。「禁欲的生活を強いられ、妻が不貞?」

「夫が、不倫をする妻の暗殺依頼をだしても、ギルドは受け付けないよ。社会的正義に反することだから、裏の仕事でも受けるんだから。それに、信徒でない貴族は禁欲的な生活をしない。統治するためだけに滞在するんだからね」

 でも、宗教的要素が強いところであり、逆にいえば教義に従って生きる人々なので、これまで暗殺の仕事で行ったことはない。

 サン・バルラ――。聖堂が中心にそびえており、その周りにぽつぽつと家が見えるけれど、その家はバラックづくりで、獣人族が周りで畑作を行い、食糧を聖堂へと供するために暮らす。あくまで巨大な聖堂が町そのものであって、その周辺を町には含めない。

 その周辺で、ボクはリクィデーターと会った。今回は、聖衣とよばれるグレー……というより、薄汚れたひらひらした一枚の布を、頭からかぶった服装をするので、元冒険者としても職業は不明だ。

「キミもこれを着て、マスクもこれをしてもらう」

 声は男で、マスク越しのくぐもった声で準備したそれをさしだす。

「侵入するには、これってことか……。気になるのは、貴族の妻を殺せ、という依頼だけれど……」

「正直、私も未だに信じられないが、この町で、人工的に獣人族がうみだされているのだよ」


「人工的? どういうこと?」

「私にも上手く説明できない。ただ、獣人族が母体を通さず、生まれてくるのだ」

 前の世界では人工授精、人工胎盤、そういう話は聞いたことがある。そうやって獣人族を生みだしているのか……? 「でも、なぜ獣人族?」

「さぁ……。でも、そうやって生みだされた獣人族はすぐに殺されている」

「赤ん坊の段階で? じゃあ、何で生みだすんだ?」

「それは、実際に見てもらった方が早いだろう」

 リクィデーターに連れられ、聖堂に忍びこむ。中は荘厳なフラスコ画の天井が廊下でさえつづき、講堂と称する場所にはそれこそ、絵画で埋め尽くされるほどだ。

「さすが、宗教的なものは金がかかっている」

 サン・バルラというのは聖バルラという意味であり、聖人崇拝のバルラ教を信奉する一団がここに暮らす。

 聖バルラは三度、蘇ったとされる人で、魔法がある世界であっても死者を蘇らせる魔法はないことから、それが奇跡とされたのだ。

 聖バルラの言行録はマニションと呼ばれ、その注釈書であるアナテイション、さらにそれを細かくルール化したコドリンと、三大法典を掲げ、コドリンに従って信徒は暮らす。

 なので、極めて質素でつつましく、かつ勤勉に動いている印象だ。皆が同じマントのようなものを着て、同じマスクをするのが異様でもあった。


 産業はそこで行われる手工業だが、様々なものを内製するのもすべて信徒だ。ただ気になるのは、ネズミとそれを追うネコが多い点だった。

 どうやらコドリンで、ネズミやネコを追い払うことを禁じているらしい。そのため糞尿や、食べかすなどが町では目立ち、小汚い印象をうける。天井や壁の宗教画と、床は真逆の印象だ。

 その聖堂の奥に、清潔に仕切られた一角があった。

 白衣をきた作業員が、この世界では珍しいガラス、ピンセットやスポイトなどを使い、何やら作業をする。その先にはケースの中で、胎動するものがあった。

 どうやらここが人工授精、人工胎盤の設備らしい。

 その先に、誕生した獣人族の赤ん坊がいた。ただし、その腕にはチューブがとりつけられ、血を抜かれている。

 泣き喚かないよう、顔にマスクをとりつけられた赤ん坊が、生まれてすぐに全身の血を抜かれ、干からびて死んでいく……。

 ココで行われている所業は、鬼畜でさえ目を覆うほどの所業だった。

「まさか……」

「血を抜いて殺すために、獣人族の赤ちゃんを製造しているのだよ」









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