第33話 疑惑の目

   ~~ 調査 ~~


「ザビのお兄さんを吹っ飛ばした魔法って……?」

「あれは、あんな威力のある魔法じゃない。多分、兄の右隣にいたベドが、城の壁を壊して、左隣にいたギジェが私と同じ魔法をつかって対抗した。二つの力がぶつかって、兄たちは大きく吹き飛んだ」

「自分たちで飛んだ、ということか……。何で?」

「分からないけれど、ベドとギジェはうちの使用人だから、親から何か言われていたのかも……」

 ザビはそういって眉を顰める。彼女は親に内緒で家を飛び出しており、事情を知ってそうしたわけではないだろうが、両親にも何らかの思惑があるのか……?


 ザビは鬼人族を怠け者、というけれど、その働きぶりは尋常でない。

「午前中で収穫が終わっちゃったのん」

 ルゥナがいうように、一日がかりで麦を収穫する予定で、午後からはボクたちも手伝うつもりだったけれど、それをルゥナとザビの二人だけで半日で終えた、という。魔法をつかっても難しいので、その腕力と作業の速度だけでザビは成し遂げてみせたのだ。

 呆れていると、お昼寝から目覚めたザビは「私はジャバを倒した冒険者を探すために、人族の町に来た。だから、午後からは人族の町に行きたい」

「探すって、アテはあるの?」

「否……。ただ、近道になるあの町を避けていた。彼が嫌がる何かがあの町にある、と踏んだ」

 なるほど、良い読みだ……。感心している場合ではない。ナナリーの町を迂回したのは、恐らく王都急襲の途上でナナリーに邪魔されることを嫌ったものだろうが、もしジャバが強引に突破することを考えた場合、きっとボクもナナリー王女から呼び出されたろう。

 ジャバがどこまで気づいていたかは分からないけれど、ボクが脅しをかけたこともあり、ナナリーとの間で何かあると勘づいていた可能性もある。いずれにしろ、ナナリーの町で探索されると、ボクに行きあたる可能性が高くなることが分かった。

 かといって、拒否もしがたく、一緒にナナリーの町に向かう。ボクと、それにフィア、ルゥナ、ミズクも一緒だ。

 生活必需品の買いだしも必要だし、何よりこうして時おり、外に連れだしてあげたいとも思っていた。午後からみんな手が空いたので、良い機会でもあったのだ。


「この町はいつ来てもいいですね」

 フィアはそう言って楽しそうだ。以前は緊張した様子をみせていたけれど、この町のことを知って、好きになったらしい。それはナナリー王女のことを知ったから、とも言えるだろう。獣人族が虐げられず、のびのび暮らせる町で、フィアも安心できるようだ。それは同じ獣人族のミズクも同じ。二人ともここではショッピングを楽しむことができる。

 ルゥナと三人で、買い物をしてもらう間に、ボクとザビはこの町で聞き込みをすることになった。

 しかし探す相手はボク……という複雑な事情もあって、事前にボクの方から助っ人を頼んでおいた。

「やぁ、来たね」

 エドリーである。ナナリー王女の親衛隊長であり、雑用につかうのは申し訳ないのだが、ボクにザビのことを押しつけた負い目もあってか、二つ返事で了承された次第である。




   ~~ 目は口ほどに…… ~~


 エドリーの案内で、この町のギルドなどを訪ね歩く。ただ、ボクはこの町の冒険者ではないので、知り合いもいない……と思ったら、声をかけられた。

「今回は、この町で仕事か?」

 それはナナリー暗殺を依頼されたとき、ボクに仕事の概要を説明した、モンクのリクィデーターだった。

 今回、そのときと同じマスクだったことを後悔したが、時すでに遅し。ギルド内で声をかけられ、しかも仕事関係であるなら、ボクも冒険者だとザビに感づかれたかもしれない。

 悪い人物ではない……と思うのだが、思慮に欠け、今回も「仕事であろう? どういった仕事だ?」と、しつこくボクに尋ねてくる。

 エドリーが気をつかって「私の護衛の仕事だよ」と言ってくれたので、モンクのリクィデーターも納得したが、それ以来、ザビの目が厳しくなったことは間違いなかった。

 ザビの目を盗んで、エドリーから「大変そうだな?」と声をかけられる。

「押しつけておいて、よく言うよ」

 ボクがそういうと、大きな胸を〝押しつけて〟きて、熱い接吻をかわしてきた。

「これは中間の報酬だ。まだ監視を頼むよ」

 その大きな胸は卑怯……肥胸だ! と思ったけれど、反論できない自分もいた。


「ミズクから、話があるって」

 フィアからそう言われ、もじもじとするミズクに向かう。「どうしたの?」

「あの……お口でして欲しくて……」

 すでに夜、ザビは一番風呂をつかい、早々に寝てしまった。それでフィアと一緒にお風呂に入っていたミズクが、開口一番そういったのだから、何らかの相談の上でのおねだりだろう。

 獣人族で、女性としての成熟がはじまっているけれど、人族からみて幼く、まだ準備が整っていないようにみえる。

 でも、口なら……と、ボクは横になり、ミズクがボクの頭をまたぐ形をとる。ミズクだけを相手にすると、他の二人がうるさいからだ。

 ルゥナは「一番なのん♥」と、早速ボクの下半身にまたがってくる。フィアはボクの乳首を弄ってくるので、右手で彼女の大きくなった胸を、優しく愛撫する。

 ミズクの張りのある柔らかな太ももに顔を挟まれ、頭を左右にふって内腿を髪の毛で優しく刺激してあげる。

 すると「はぅ~ん……」と切ない声をだす。まだまだ色々な刺激がある、と教えつつ、彼女のそこに舌を這わす。生温かく、湿ったざらざらのそれが亀裂を辿ると、それだけでぶるんと大きく体を震わせた。

 彼女のまだ膨らみのない胸を左手で優しく愛撫しつつ、その体の位置をキープするよう誘導する。

 舌で周囲を十分に刺激してあげると、血行が良くなったように、周辺がぷっくりとしてくる。舌をその隙間に滑りこませようとするけれど、まだしっかりと閉じられ、中々に入っていかない。

 指なら押し込めるけれど、舌はまだきついようだ。でも、周りを十分に刺激してあげたことで、どうやら満足したようだ。最後はボクが上半身を起こして、ふつうに左手の指を挿しこむと、ミズクはすぐにイッた。

「わ、私も……」と、フィアが真っ赤な顔で、おねだりしてくるのが可愛くて、ボクも早速、彼女が横たわったその足の間に、顔をうずめて、もう濡れ始めているそこを舐めとるように、舌を這わす。

 でもそのとき、ふと気づく。囲炉裏のある部屋とつづくドアが少し開き、そこからこちらを覗く姿があることに……。

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