第20話 治外法権

   ~~ お風呂 ~~


 結局、四人で一緒にお風呂に入ることになった。

 お風呂は木製の湯船が一つ。素人の手作りなのでお湯がすき間から漏れるけれど、体育すわりをして入る形だ。洗い場は簀の子を敷いてあるだけ。竈で沸かしたお湯を湯船に張っておき、そこから汲んでつかう。追い炊きもできない。そんな狭さなので四人も入ると、ぎゅうぎゅうだ。

「フィアから洗ってあげるよ」

 ミズクがいるのでエッチ禁止! と二人に伝えてあるけれど、フィアの背中をみるとボクの方が悶々とする。後ろから抱きしめたいけれど、ミズクがじっとこちらを見ており、耐えている状況だ。

 でも、ボクの手が脇腹にまわったとき、さっとフィアが手をつかみ、自分の胸へとボクの手を導く。

「前も……洗って下さい」

 その弾力のある膨らみを、タオル越しでも触れたらボクが手を離せなくなる……と分かってそうしたのだ。でも、揉んだりしたらダメだ……と、自分を戒めるけれど、その丸い膨らみを、円を描くように外周部からゆっくりとタオルでこすり上げ、距離を稼ぎつつ、その弾力を愉しむ。

「ん~ぅぅ……」と、フィアが甘い吐息を上げるので、冷や汗がでそうだ……。


 次に、ルゥナを洗おうとしたところ、正面を向いてすわってきた。

「背中を洗うんだけど……」

「フィアも前を洗ってもらっていたのん! 私も!」

 こうなると思っていた……。でも、フィアにしてしまったから、もう後戻りもできない。ルゥナは身長に比べると胸は小さい。スレンダー系で、その分はフィアよりも刺激的ではない。でも、ボクが胸を洗ってあげると、彼女の手が自分の下へと伸びるのが見えた。

 三人ですると、どうしても構ってあげられない時間があるけれど、彼女は自分で弄るぐらい、刺激が欲しいタイプだ。最初に自らボクの胸に飛びこんできたように、エッチが好きなのだ。

 最後にミズクを洗う。背中の翼は「濡らしていいの?」と問うと、

「水は弾きます。私、髪の毛も水をはじいちゃうんです」

 そういえば、湯船につかっていたのに、水に濡れていない。頭からお湯をかけても、確かに髪の毛はすべて水をはじいてしまう。

「水をかけるだけで十分なんですよ」

 これはフィアが付け足した。鳥の水浴びと同じで、脂で潤っており、水をかぶるだけでよいようだ。

「私も……」と、ミズクはフィアの真似をするように、ボクの手をつかんで胸へともっていく。ただ、それこそスレンダーなルゥナと同じぐらい……というか、服の上からでは気づきにくかったけれど、やや膨らんでいる。ミズクがぎゅっと上から押し付けるのがいじらしいけれど、その微かな膨らみを喜んではいけない……と、フィアとルゥナから睨まれていることもあって、やはり冷や汗がでそうになっていた。




   ~~ 無法地帯 ~~


 マッシュルーム通信で、仕事の依頼がきた。

〝ゴートシティにおいて

 動物虐待をしている業者の討伐〟

「珍しいわね。こういう依頼がくるなんて……」

 ネルも不思議そうだけれど、ボクが個人的にそういう輩を暗殺することはあっても、動物を虐待するからといって暗殺するような依頼はこない。何しろお金がないと依頼はだせないし、依頼者にメリットがない。動物愛護の精神がよほど強い依頼者でないと、この依頼はだせないはずだ。

「それに、ゴートシティというのが気になるね。この国で、もっとも治安が悪いところだ」

 貴族が領主として赴任するも、裸足でにげだすか、それこそ殺されるか……。そうして今や治外法権。無法地帯と化していた。

「あそこだと、動物虐待というより、違法売買って感じでしょうね。でも、誰がこんな依頼をだしたのかしら……?」

「ま、普段していることでお金をもらえるなら、何よりだ」

 ボクも気にならないはずもないけれど、そう楽天的にいって、気持ちを奮い立たせていた。


 ゴートシティ――。

 多くの町では岩やレンガで築かれた城があり、その周りに町がある形だけれど、ここでは中心のお城がほとんど崩れている。貴族が赴任しても、周囲から攻められて崩されるし、様々な組織がここでは跋扈し、そのせめぎ合いが起きており、お城を押さえた組織が有利となってしまう。それで見るも無残に、誰もつかえないようにされたのだ。

「来たね」

 指定された場所にいくと、待っていたリクィデーターは赤くて鼻の高いお面に、白いツケ毛で頭を覆っていた。でも、頭はそうやって完全に隠すのに、上下トレーナーのような動き易そうな服に、丸いお腹は隠せないようだ。

 まるで中年オヤジの休日の昼下がり……? ただ手指は細く、太ったのはここ最近のようだ。

「報酬はよくないけれど、君なら受けると聞いていたよ」

「動物を虐待しているって?」

「正確には、動物を魔獣にして、兵器にして売っている」

「えッ⁉」ボクが驚くのも無理はない。この世界で、魔獣とは動物が精神を破壊されてなるものだ。精神が壊れているから、テイムをしても言うことを聞かない。もう殺すしかない。

 スライムのネルのように、生まれたときから魔獣というケースもあり、その場合はまた事情が異なるけれど、やはりテイムは効かない。なので、この異世界にも冒険者のテイマーはいるけれど、あくまで動物をつかって道案内とか、道具をはこぶといった役目が多い。


「魔獣にする……どうやって?」

「私もよく分からないけれど、薬をつかっているみたいだね。勿論、売るときには薬で眠らせている。目覚めたら大暴れ、最強の兵器さ」

 どうやら、ボクは町にいないので知らないだけで、最近は魔獣の害が各地で起きているらしい。その元凶が、ここで売られている魔獣……ということのようだ。

 何だか嵌められた気分だ。恐らく、国家としてもその犯罪を何とかしたくて、でも貴族でさえ対応ができないこの町での事件に、ギルドに依頼がきた……ということだろう。

 しかし経緯はどうあれ、動物を蔑ろにする奴は赦せない。

「ということは、組織だってやっている、ということか?」

「そうだね。この町のコントートという組織が、それをしている。調べたところ、トップにいる人族、三人を殺せば、恐らく彼らは崩壊するだろう」

 どういった組織でも、人族がトップに居座っている。その方がうまくいくからだ。構成員のほとんどが獣人族でも、彼らは仕えているだけ。悪事を主導するのはいつも人族だ。

「その三人を暗殺する……という依頼か」

「キミならできるだろ?」

「やるさ。依頼者がどうだろうと、ミッションが困難だろうと、ボクにとって動物を虐げる奴は赦せないからね」






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