第9話 後ろから

   ~~ エブリーナイト ~~


 フィアはどうやら、後ろからが好きらしい。ただ、それは背中にボクの体温を感じられるからで、ボクがすわる形で彼女が向こうを向いてまたがり、しっかりと接合してくる。

 ボクも尻尾がお腹……特に下腹部の辺りをもふもふと刺激し、別の意味でも気持ちよい。

 そのまま手を彼女の膨らみへと回し、まるでシートベルトででもあるかのように、彼女の背中をしっかりと、ボクの胸へと押し付けるように抱く。そのまま彼女は後ろを向いてくるので、やや開いた彼女のその唇に、自分のそれを重ねる。

 ボクが唇を放そうとすると、彼女はダダをこねるように追いかけてきて、また吸い付いてくる。これだと腰がつかえないけれど、彼女はつながりが嬉しいのであって、ボクもしばらくは口内の粘膜が溶け合うように絡みつくのを愉しむことにした。

 獣人族は、舌が長いことで知られている。フィアはそれほど目立たないけれど、人族と比べると断然長く、あごの先まで届く者もいるほどだ。

 だから舌を絡め合うと、彼女の方がリードしてきて、ボクの舌を丁寧に舐めるようにしてくれる。

 胸も、まだボクの手にしっかりと収まるぐらいだけれど、獣人族は大きい胸であるのが一般的だ。

 獣人族は、人とは年齢の重ね方が異なる。大体、5歳で大人となり、四十年ぐらいが寿命とされた。

 フィアは記憶がないので、何歳かは不明だけれど、まだ3歳ぐらいか? いずれにしろ、〝奇跡の子〟とされる存在とは関係ないはずである。もしそうなら、ギルドが放っておくはずもない。

 でも、そうやってボクと密着したとき、すべての感触が奇跡のように、ボクの好みにぴったりだった。


 彼女の胸を優しく揉みしだき、互いの舌を吸い合いながら、しっかりとつながっている。

 こうして互いに気持ちのよいところを埋め、重ね合わせているのが彼女はお気に入りだ。だから後ろから、これが一番すき間なくボクと密着できるので、彼女は好きなのだ。彼女のすべてを、ボクが受け止めているように感じられるから……。

「ふぅん~……」

 フィアはとろんとした目をして、力が抜けてしまう。イッた……。彼女のそれは分かり易い。

「ボクも気持ちよくして。行くよ」

 彼女をお腹に乗せたまま、ボクは腰を跳ね上げるようにする。すると、ぴょこッ、ぴょこッと小さな彼女の体が浮いて、またすとんと落ちる。無重力のそのこすりつけは、まだしっかりと締まりのよい彼女のそこがボクをしっかりと刺激してくれ、気持ちよさが倍増する。

 ボクがイクのと同時に、フィアがまた「ふぅん~……」と力が抜けてしまう。彼女はまた……。でも一緒にイケて、ボクも嬉しく感じた。




   ~~ 新たな依頼 ~~


 ボクを拾って育ててくれた、母さん犬について少し話しておこう。ボクは母さん犬の乳や、テイムした動物の乳を飲んで、何とか一歳を超えるまで育った。

 でも、そろそろ離乳食……という段階で、困ったことになった。動物たちが素材は運んでくれるけれど、誰も調理をしてくれない。胎児のころから、ボクは前世の記憶をもっていたので、よちよち歩きができるようになったら、自ら離乳食をつくることにした。

 そうして少しずつ独り立ちを始めたある日、母さん犬が、一体のスライムを連れてきた。

 ボクは動物ならテイムできるけれど、魔獣であるスライムには効かない。まして魔獣は人を襲う……と聞いている。戸惑っていると、母さん犬とどういう約束をかわしたのか分からないけれど、スライムがボクの教育係になった。

 母さん犬は、それをみて安心したのか、ほどなく息を引きとった。出会った時から年齢が高くて、きっとボクを最後の子……と決めていたように、一杯の愛情をかけて育ててくれた。

 そのスライムが、ネルである。彼女はボクに魔法を教えてくれた。この世界では、人族は学校に通うと、そこで魔法を学ぶらしい。だから人族はほとんどが魔法をつかえるし、その中で優秀な者がウォーロックや、メイジとしてさらに魔法を磨いていくのだ。

 ボクは二歳のころから、ネルに魔法の英才教育をうけてきた。転移魔法を操れるのも、ネルによる教育の賜物だ。

 少女の閻魔様から言われたように、魔法も特段、すごい能力が与えられたわけではないけれど、これはネルのお陰といっていい。ネルは優秀な魔法使いなのだ。


 そして気になるのは〝ドミネート〟である。少女の閻魔様は「チート能力は与えられない」と言っていた。今では、チートが何を意味するのか、分かるようになったけれど、ドミネートはちがうのだろうか……?

 確かに対人最強の能力ではあるけれど、人族にしか効かないし、そういう点で片手落ち。この世界で、人族は威張っているけれど、絶対数は少ないのだ。

 もしかしたら、前世で植物人間だったことが影響する? と思っている。体を操りたい……という気持ちが強くて能力を獲得した……。それがシンプルに受け入れられる理由であり、耳がよいこともそうだ。

 耳だけが生きていた89年間――。周りの音を、声をよく聞こうと、常に耳を澄ましていた。

 ショートスリーパーであるのも、体が疲れないためか、眠くならなかった。もしかしたら、ホルモンとか、何らかの影響でそうなったのかもしれないけれど、常に耳を澄まして周りを確認し、眠らなかったことで、ここでも同様に過ごしているのかもしれない。


「まったく……。毎晩、毎晩、よく厭きないわね」

 山小屋からでてきたボクに、ネルがそう声をかけてくる。

「初めてできた彼女だよ。本当は一日中、やっていたいところだよ。でも、動物たちのお世話があるし、フィアも疲れて寝ちゃうから、こうして朝には一区切りつけているだけさ」

 臆面もなく、ボクはそういってみせた。童貞がエッチを覚えたら、しばらく止まらない……という感じで、放っておけば三日ぐらいぶっつづけでする自信もある。

 そのとき、マッシュルームで通信があった。ギルドからの仕事依頼だ。

『暗殺依頼

 ヤーセルの町で冒険者のパーティーを壊滅。

 トラブルあり。対応には難航も予想される。

 早急、要注意案件』

 ボクもその依頼をみて、首をかしげる。

「こういう普通の依頼が、ボクのところにくるかな?」

「冒険者のパーティーが、どの程度のレベルかにもよるでしょう。壊滅させて欲しいって……」

 ネルもそう呟くが、嫌な予感しかしなかった。











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