第3話

 それからのんびり歩いて現在の戦場となっている、七〇八前線へと向かう。

 この時間帯には様々な傭兵達が交代の兵士達と共に前線へゾロゾロと向かう様は圧巻である。

「今日は東の方へ行ってみようか?」

「そうするか」

 他の者たちは昨日戦闘が激しかった西側へと向かっていた。

 戦況がどうなるかはその日次第だ。

 軍部の作戦は基本傭兵たちには知らされる事はない。スパイが紛れている可能性が高いからだ。なので戦況がどうなるかは軍部の作戦次第となる。

 昨日戦闘の激しかった場所だからといって今日も戦闘が激しいとは限らない。

 今日一日何も起こらない所でのんびり過ごすの事になるのか、意外にも攻めてきた敵に奮闘する一日になるかは運に近かった。

 その辺りは割と気まぐれなロクホートに任せているフリゲリー。自身で決めてもハズレを引くことの多いフリゲリーにとっては、この気まぐれさが中々に丁度良かった。それにロクホート気まぐれはよく当たり、良い戦闘になって一日楽しめたりするのだ。だから任せている処もあるのだった。


 東へと進む中で骸になった兵士や傭兵の姿を見るが、弔う事無くそのまま放置されている。

 理由は簡単だ、手間が掛かる、それだけだ。

 兵士を始め傭兵も数が多すぎる、それ故に同じパーティでない限りは放って置く者が多い。特に傭兵は『己の力不足』という意味で捨て置く者が多い。そして肉食の鳥が死肉を貪りにくる。

 道なき道を東に向かいながら、何の感慨も無く死体を乗り越えて二人は戦場の東へとやって来た。

 今日は面白い戦闘になるのか?と敵がやって来るまでをロクホートの望遠鏡を借りて敵陣地を見やるフリゲリー。すると敵軍部の装甲車がこちらへやって来るのが見えて、

「今日は楽しくなりそうだ」

 と呟くと、望遠鏡をロクホートに返した。

「ホントだね、西側の連中どうするかな?」

「急いでこっちに来るんじゃないか?」

「それじゃ取られる前に楽しまないとね」

 ロクホートは後ろ腰にあるホルスターから二丁拳銃を取り出し、装甲車に向かって一発撃った。

 それは装甲車の運転手に当たり、装甲車の動きが止まった。こんな遠くから当てる等至難の技だ。それだけロクホートの拳銃の腕が高いのが嫌でもわかる。

「さて、止まった」

「それじゃ行くか」

 フリゲリーは背中にある大剣をその手に構えると、二人揃って止った装甲車へ向かって走り出した。

 ロクホートは威嚇の為に装甲車に向かって数発撃つと、中から兵士が出て来た。銃剣を持った兵士が走り向かってくるのをフリゲリーは横に薙ぐと数名の兵士が地面に転がった。ロクホートは向かって来る敵兵士の脳天に倣いを定め、的確に兵士たちを屠っていく。フリゲリーの方は起き上がった兵士達が銃剣で襲い掛かって来るのを大剣でいなし、振り払い、隙を見て一人の兵士の銅を大剣で真っ二つにした。倒れ大量の血が流れる様を見て怯む兵士達を見てフリゲリーは隙だらけの彼らを大剣で体を真っ二つにしていった。

粗方お互いの作業が終わると、元の道を戻り二人は合流した。

 フリゲリーは大剣に付いた血を拭いながら、お互いの情報を交換し合う。

 フリゲリーの方は銃剣を持った兵士達が襲い掛かりそれを真っ二つにした事を報告した。

 ロクホートの方はとういうと、兵士達は早々に全て脳天を撃ち抜いて即死させ、装甲車の中を調べたらしい。中にあった多少血の付いた作戦所の類を全て集めて取り出して纏め、大きめの上着の中に入れていた。

「これ、どうする?」

「お前はまた……どうするも何も決まっているだろう」

「ハハ、そうだね」

 そうロクホートは笑うと血の付いた書類を乱雑に上着の中に仕舞うと、歩き出す。

 行先はガゼリアの街の軍本部。

 一度戦先程ロクホートが入手した書類が役に立つのかどうかを判別して貰う為に、ロクホートが拳銃を仕舞うと、フリゲリーは大剣を仕舞う。そうして瓦礫だらけの道無き道を進みながら軍の本部へと向かう。

 軍本部は安全地帯であるガゼリアの街にある。

 引き返す様に戦場を後にすると、遅れてやってきた傭兵達が戦闘へと参加していった。

 早朝に帰って来た二人に怪訝に思われつつ、ガゼリアの街の軍本部へと向かって行くと軍部の扉を開くと中へと入って行く。

「傭兵が何の用だ」

 等と入り口近くの軍兵士が声を上げるが構わず奥へ進み、受付らしい場所へと向かうと、

「ちょっとお偉いさんと話がしたいんだけど?構わないかい?」

 そんな風に柔和にロクホートが言うのだが、

「傭兵が何の用だよ」

 そう受付の椅子に座った兵士は傭兵相手に横柄な態度態度を崩さないらしい。その目の前に、先程手に入れた血の付いた書類をバサリと置いた。それに驚くと席から立ち上がり、上司を呼びに行くのだった。

 その後、そこそこ偉いだろう勲章付きの軍士官にロクホートが、先程と同じ様に血の付いた書類を再度バサリと机の上に置いた。それに驚きつつ勲章付きの士官は驚きながらも書類を見ると、

「これはっ!敵のこれからの行動予定表!!」

「なんだと!?」

 その大きな一言で、途端に軍本部は騒然となった。

「これでこれからの戦闘予定を組み上げるのに役に立つ!」

「朗報だぞこれは!」

「計画を練り直さねばならないな…」

 等と、フリゲリーとロクホートは呆然とながら、互いに目をパチクリさせた。フリゲリーがそういう表情なのかは解らなかったが。

 取り合えず、軍にとって有益な情報を持ってきた事が解ったので、フリゲリーはトントンと机を人差し指で叩きながら、

「重大な情報らしいな?それで、それに見合う報酬は?」

 軍内部も少々混乱していた為か専門の者がおらず、

「後日報酬に関する兵士を派遣しますので、所属ギルド名を教えてください」

 と慌てている若い兵士が言うのに従って、アルハドギルドとギルド名を告げると何かメモに書き込んでいた。

 時刻は昼前、これ以上やる事の無くなったフリゲリーとロクホートは、思ったより事が早く済んでしまい暇を持て余していた。

 けれどここは戦場、やる事ならば山の様にある。

 もう一度戦場へ向かうもよし、街で早めの祝杯を挙げるも良しだ。

 けれど二人は何やら二言三言言い合うと、もう一度戦場へ行く事にした。

 先程の装甲車の辺りに傭兵達が集まっているのが見えてフリゲリーは行こうかと思ったが、ロクホートに止められて違う戦場へと向かう事にしたのだった。

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