第7話 錬成術

とにかく、2人とも言語を覚え、魔法も使える様になったのでお祝いだ。

この3ヶ月程で、料理のレパートリを少しづつ増やしていった。

主食はパスタ

野菜も色々と有り、失敗をする事も有るが、それなりに美味しいソースを作れる様になった。

そして、今日はメレンゲを使ってパウンドケーキにも挑戦。

ふっくらして、会心の出来だ。


「生クリームやふっくらした生地を早くゲットしようぜ。ショートケーキが食べたい。」


と、浩司が目を輝かして子供みたいに話してくる。


「牛乳さえ有れば、錬成術で生クリームは出来るかも。」


「そうなのか」


身を乗り出す浩司。近い、顔が近過ぎる。

ドキドキするので、こういう行動は止めて欲しい。


「光と闇魔法を使いこなせれば、錬成術ができるみたいなんだ。

 生クリームは牛乳から取り出した乳脂肪だから何とかなるんじゃないかな。」


この世界の文字を読める様になってから、書斎の本を読んで得た知識を教えてみる。


「固くないパンも作れるのか?」


「この世界に、イースト菌が有れば。

 菌を作るのは無理だけど、炭酸ガスを発生させる材料が有れば代用はできると思う。」


「早く錬成術を使える様にならないといけないな」


何が「いけないな」のかは分からないが、喜んでいる浩司を見ていると頑張ろうという気になってしまうから俺も単純だ。

きっと町に出れば、こんな事も懐かしく思えるのだろう。



錬成術の基本は光魔法と闇魔法となる。これが、光と闇の魔法を特殊魔法と呼ぶ所以だそうだ。

錬成術とは光と闇の魔力をエネルギーとして使いながら材料を分解、再構築させる様な感じだ。

原理さえ分かれば、化学反応も促進出来るみたいだ。

普通なら、それぞれの素材、行為に合わせた呪文を唱えながら作業を行う必要があるが、俺の場合、イメージだけで作業が行えるので簡単で良い。


素材に魔力を浸透させ整形していくと更に高度な事が出来る様になる。

例えば使用する素材が鉱物の場合、鉱物に土属性の魔力を浸透させ、その上で錬成術を使い整形する。

そうする事で、ただ錬成するより、より強度を上げたり、細かい作業が出来る様になる。

浩司に手伝ってもらえば全属性が揃うので、練成の訓練に付き合ってもらうつもりだ。


ある程度、魔法が使える様になった所で、錬成術の練習も始めた。

錬成術は物理的なイメージがし易い事もあり、俺との相性は良いと思う。


浩司の方は、昼まで一緒に行い、夜は剣術を練習している。

書斎の隠し部屋には剣や楯があり、それを使ってトレーニングをしている。

ただ、グリムにしても剣の技術に対する知識は無く素振り中心だ。。

自己流だが真剣に剣を振るう浩司はかっこよく、なんとなく眺めてしまう。


グリムの指導の下、俺が先ず錬成したのは服。

少し肌寒くなって来たので、いつまでも裸と言うわけにはいかないだろう。

隠し部屋にあった服をベースに作ってみたのは紺色の甚平。


「なかなかカッコいいじゃないか」


浩司は気に入ってくれたみたいでポーズをとっている。

確かにカッコいい。逞しい体だと、男らしさがアップすると思う。


「お揃いの服か。同じ服でも拓ちゃんは可愛いらしいな。」

「可愛いって何だかね。他の人がどんな服を着ているのが分からないから、とりあえず」


同じ服なのに、俺の場合は逞しさは全く無い。

浩司がほめてくれるのなら、それでも良しとしよう。

他に作ったのは、掘った穴の表面を石でコーティングした露天風呂

そこに水を汲み入れ、火魔法でお湯にして完成。

一面の星空の下、浩司と一緒にノンビリ浸かる。


「お~、気持ちいい。やはり、日本人には風呂だよな」

「だよな」


と、この世界に来て初めての風呂にご満悦。

風呂に入ると、一日の疲れが癒される。

水魔法を使えば水そのものを操作できるらしいので、浩司には頑張ってもらおう。



ちなみに、魔法で生み出した水は飲んだりする事は出来ない。

浩司が興味本位で少し飲んだが、丸一日腹を下していた。

回復魔法をかけてみたが効果は無く、水を体外に出すしか対策方法は無かった。


そして、俺だけの技になってしまうが

光属性には浄化と言う解毒したり、アンデットを成仏させる魔法が有り、応用で不純物や汚れを取り除ける。

俺に関して言えばトイレ問題は解決。

浩司が羨ましがっていたが、町に出るまで木の葉で我慢してもらうしかない。

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