第6話 魔法習得

魔道具が保管されていた隠し部屋には服も有り、保管状態が良いのか痛んで無かった。

ただ、俺には大き過ぎ、浩司には小さく着るのには無理が有った。


「他に人が居ないから裸のままでも良いよ。」


と浩司は言っているが、素っ裸だと俺が目のやり場に困るので越中ふんどしの下着だけでも付けてもらう。

ゴムが無いので仕方なしの対応だったが


「それにしても、浩司って似合うよな。」


俺が褒めると「どうだ」と言いながらポージングを決めて見せつける浩司。

惚れ惚れする逞しい体で、裸よりもエロ感じがする。


魔力操作の練習を続けること1週間。

俺も浩司も魔力放出が出来る様になり、十分な魔力操作が可能となっていた。

今日は朝からテンションが異常に高く、朝食もそこそこに直ぐに練習を始める。

そう、ついに魔法を使うのだ!


『いいか、魔力操作は全ての基本じゃ。もっと早く、正確に動かせる様になる必要が有る。

 魔法を使える様になっても、日々の練習を欠かすんじゃないぞ。』


グリムは、浮かれていた俺達に一言いってから魔法について説明をしてくれた。

魔法とは、放出した魔力に方向性を持たせる様なものらしい。

例えば火の魔力を放出する際に、どの様な火にするか、どう動かすかをイメージし呪文を唱える事で火を生み出す事が出来る。

火、水、風、雷、氷、土属性の魔法はその属性を生み出したり、動かしたりする


木属性の魔法は植物の急速に育てたり、蔓の鞭で攻撃できる訳でもなかった。

植物に栄養を与えたり、果実を甘くしたりと植物を育てるための補助や、錬成術で木や布等の強化補助等に使用できる。


光属性の魔法は、光を出す他に、肉体強化、治癒、解毒の他に、防御の為のシールドや結界を張ったり、アンデット等の浄化を行う事が出来る。


闇属性の魔法は影を操ったり、呪いによる状態異常、錬成術に使うと、時空間を歪める事が出来る。食料を保存しておいたバッグも闇属性の魔力を使い作った物だった。


一通りの説明を聞いて、俺は最も分かり易い光魔法に挑戦する事にした。


《光属性の魔力を放出しながらロウソクをイメージ》


豆電球程の光の玉が発生した。

呪文を唱えずに光が発生したが、魔力と魔法の違いが良く分からない。

とりあえず、他にもイメージを膨らませていく。


《電球をイメージ》


光の玉が大きくなり、明るさが強くなった。


《日光をイメージ》


まぶしい光で目を開けていられない。

そして強い力をイメージすると、魔力の放出も大きいみたいだ。


『何故、呪文を唱えずに魔法を使えるんじゃ。

 呪文を使わずに魔力を魔法に変換できるとは聞いたことが無いぞ。』


俺がやった事は、魔法だったらしい。

呪文を唱えずに使えるのは俺達が異世界から来ている為かは分からないが、便利な事なので良しとしておく。

そんな練習を3週間続け、俺も浩司もやっと形になってきた。

やはり、浩司も呪文を唱える必要もなく魔法を使う事が出来る。

ただ、呪文を唱えずに使えるだけで、この世界に存在しない魔法は使えず、多少のアレンジが出来る位だ。


グリムに言わせると俺達の魔力量は一般的な人と比べて異常に多いそうだ。

魔力が切れる心配が無いと分かると、朝から晩まで魔法の特訓が続いた。

ある程度の魔法が使える様になると、次は


『良いか、常に体内に魔力を循環させるんじゃ。

 そうすれば、高出力の魔法早く放つことができる様になる。

 戦いながら、これが出来る様になれば及第点じゃ。』


2つの事を並行して行う様なものだったが、徐々に無意識に体内での魔力循環を行なえるようになっていった。

しかしグリムは容赦が無く、慣れてくると更に厳しい訓練を行い、何時も2人ともヘロヘロだ。


『魔力切れの心配せずに、特訓が出来るとは嬉しい事じゃ。

 更なる特別メニューを考えてやるぞ。300年ぶりに腕が鳴るわい。』


逆に、グリムが生き生きしていて怖い。

魔道師としての筋は良いと褒めらてはいるが、今は魔力量による力技になっていて無駄が多いらしい。

森を抜けて町に出るなら自分の身は自分で守れないと話にならないと…

俺達はグリムの指導に何とか喰らい付いて行った。



このグリムのスパルタとも言える特訓の成果として俺は治癒魔法を使いこなせる様なり、浩司もこの世界の言語を覚える事にした。

ただ、この治癒魔法、魔力さえあればどんな怪我でも治せると思っていたが、酷過ぎる怪我は治す事は出来ないらしい。

それどころか、外部から与えられる魔法の影響が強すぎると、体が異物として拒否反応を起こしてしまう。

また体内の毒を除去する事も出来るが、病気には効果が無い。

正直、この治癒魔法に不安も有るが、浩司に気付かれない様に堂々とするしかない。


意識を失い倒れると大変なので、今ベットに横になっている。


「問題無く覚えられるかな?」


浩司が不安そうに言ってくる。


「大丈夫。何が有っても俺が対処するよ。」

「頼むぞ。」


そう言うと魔道具に魔力を注ぎ込み始めた。

結晶が輝き、そして浩司の体に吸い込まれる様に光が消え結晶が崩れる。

俺は何時でも治癒魔法が使える様に魔力を手に込めていたんだが…


「少し、ショックが有ったけど終わったみたいだ。」


確かに、この世界の言葉で会話でき、本も読めるようになっている。


「グリム、何で俺の時だけ気を失う程のショックを受けたんだ。」

『お主の体質としか言いようが無いな。』

「……」

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