第8話 魔獣との戦い

魔力は高く、攻撃、防御は十分な状態だったが、扱いが不慣れなため練習を重ね

ついに、グリムに十分魔獣と戦える状態になったとお墨付きをもらった。

そして、この世界に来てから半年、初めて家の周辺に張った結界の外に出る事にした。


グリムが用意していた素材を使って作り上げた装備を身に付ける。

浩司は普段使っている剣を持ち、俺も形ばかりに剣を持ちグリムを背中に背負った。


グリムが使っていた杖も有ったが、他人が使えない様にする所有者縛りの闇魔法が掛けられている。

盗まれない様に色々と試したらしく、その結果この300年の間に何故か黒い不気味なオーラを纏う様になっていた。

グリムにも理解でない現象らしく使うのは禁止、禁止されなくても怖くて触りたくない。


装備を揃えたものの、ガチガチに緊張している俺を見て


「拓ちゃん緊張してるみたいだな。俺が確実に倒すから大丈夫」


と浩司が笑いながら声をかけてくれたが、浩司も緊張しているのが分る。


『儂の知識も役に立つぞ。それに、拓の魔力を使えば周囲の気配を感じることも出来る。』

「そんな事が出来るのか。」

『ある程度は出来るぞ。任せろ。』


本当に心強い。しかし、俺がこんな状態でどうする。


「おし」


と大声を張り上げ全身に気合を入れる。


「俺が魔獣の攻撃をシールドで防ぐから浩司は魔獣を倒すことに集中して。

 厳しいと思ったら、直ぐに結界の中に戻ろう。臆病くらいで丁度良い。」


そう言って、ぎこちないながらも笑って見せた。


「「出発だ」」


浩司が風魔法で探索を開始する。周囲を調べてみたが小動物の気配しか見つからない。

更に範囲を広げていくと大型犬サイズの群れを発見。

集団と戦うのは止め、その場所から離れて開けた所を歩いていると、いきなり先ほどの群れが動き始めた。

それも俺達がいる方へ。その後ろに倍の大きさの魔獣の気配。


「拓ちゃん、さっき見つけた魔獣の群れが巨大な魔獣に追いかけられてるみたいだ。急いで、結界に戻るぞ。」


しかし、想像以上に動きが早い。

グリムが俺達との距離を教えてくれるが、体力を強化する光魔法を掛けても俺の足では結界の前に捕まってしまう。

隠れるにしても、丁度良い場所が無い。


「浩司は先に、俺は後から追いかける。」

「駄目だ。俺が時間を稼ぐから、その隙に結界まで走れ。」


そう言って、魔獣がやってくる方向に向かって剣を構えた。


「なら俺も戦う。俺が体勢を崩して隙を作る。」


そう言いって、浩司と自分に光属性による体力、筋力強化の魔法をかける。

直ぐに緑色の犬に似た魔獣の群れが俺達の方へと逃げてくる。

そして、その後方には体長5mはありそうな赤いトラの魔獣。


『まさかレッドタイガーとは、気を付けるんじゃ。皮は固く刃物を通さず、強靭な力に火魔法を使うぞ。』


グリムの言葉を浩司に伝えて、先ずは先手を行かせてもらう。

土魔法でレッドタイガーの足元に穴を掘り、その土で目の前に壁を作る。

目論み通り、穴に躓き土の壁に激突して巨体が倒れた。

体勢を整える時間を与えるか。

光の矢でレッドタイガーの目を攻撃をし、闇魔法で黒い触手を作りだし巨体を抑えこむ。


「ナイスだ、拓ちゃん」


浩司がレッドタイガーに向かって行こうとすると、いきなり俺達をめがけて複数の炎の玉が飛んできた。


「任せろ」


炎の球に浩司が水の球をぶつけて相殺していく。

炎の玉が途切れた瞬間に鋭い氷の刃を放つが、それはレッドタイガーが作った炎の障壁に阻まれてしまった。


俺も手伝いたかったが、闇魔法で押さえつけるだけ手一杯だった。

魔道具等を使用しない限り、複数の魔法を同時に放つ事は出来ない。この闇魔法を使っている間は浩司に任せるだけだ。


「炎の壁かよ。じゃあ、これでどうだ」


浩司の魔力が膨れ上がり、そして強力な雷が迸った。

直撃後レッドタイガーが雄叫びと共に痙攣し、そのまま動きを止めた。

闇魔法で押さえつけたまま様子を伺っていたが、どうやら仕留めたみたいだ。

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