第94話
カジンダスは素早く動いて僕らを半包囲した。
五十対七だから完全に優位に立っているつもりだな。
だけど、砂漠の鷹は一筋縄じゃいかないんだぞ。
「エリシモさんを返してもらおうか」
「そうはいかねえ、あの女にはまだ用があるんだ」
「彼女をどこにやった?」
「心配するな、丁重に扱っているさ。」
どこかで見張られているのだろう。
これ以上の問答は時間の無駄だな。
「カジンダスの武器には毒が塗ってあるぜ。それから、あいつらは全員暗器を使うから気を付けろよ」
シドの忠告にオーケンが目をむいた。
「詳しいな。お前何者だ?」
「別に大したもんじゃねえ。通りすがりのイケオジさっ!」
シドのガントレットからボルトが連射され、それが開戦の合図となった。
接近戦を仕掛けてくると思いきや、奴らは全員で小さなナイフを投げてきた。
さすがは特殊部隊だけあって戦い方も尋常じゃない。
しかも集団戦に長けている。
次々と飛来するナイフには毒が塗ってあるようだ。
これでは防御に徹せざるをえない。
初手は完全に奴らが優勢だった。
だけど、敵にいつまでも好きにやらせるデザートホークスじゃないぞ。
「舐めんなよっ! これでもくらいやがれ!!」
小さな傷を負いながら投げたララベルのマジックグレネードが炸裂すると、奴らの包囲網が一時的に崩れた。
「メリッサ、リタ、頼む!」
合図とともに二人が高速で踏み込んでいく。
バックアップはシドとララベルだ。
「くそ、なぜだ? どうしてこいつらには毒が効かねえ? とっくに動けなくなっている頃合いだぞ!」
それは僕が定期的に『抽出』で毒を抜いているからだ。
こいつらには教えてやらないけどね。
ただ、戦闘の中での手当なので完全に抜けていないのが難点だ。
おかげで皆の動きもベストな状態とはいいがたい。
フレキシブルスタッフの攻撃を受けたカジンダスの剣が砕けた。
おそらく剣を握っていた手の骨も無事では済まなかっただろう。
一打ちごとに敵を薙(な)薙ぎ払い、僕はオーケンへと迫る。
僕も含めた全員が
なんとか毒だけを抜いて、武器をふるい続けた。
時間が経過して半分以上のカジンダスが倒れた。
オーケンも自分の不利を感じて逃げ出す算段をしたようだ。
「くそ、お前たち、あいつらを阻止しろ!」
後を部下に任せて戦艦の内部に入っていく。
「ここは任せて、セラは奴を追って」
「でも、奴らの武器には毒が」
カジンダスの遺体を探っていたシドが小さな小瓶を取り出した。
「解毒薬なら見つけたぜ。安心して行ってこい」
さすがは元カジンダスにいたことだけのことはある。
「すまない。頼んだよ!」
僕は単独でオーケンを追った。
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