第50話 グランダス湖
十二闘神とタロスを倒した僕らは、ついに聖杯を手に入れた。
聖杯は優勝トロフィーみたいな形をしていて、カップの直径は五十センチにもなる。
すべてが高純度の金晶でできていたので、一人で持ち上げることさえ難しいくらいに重たい。
僕は一トンのレッドボアでさえ担げるのにだ。
「タロス、斧、槌、盾、は協力して聖杯を持ち上げて」
タロスたちに手伝わせて聖杯をデザートフォーミングマシンの部屋まで運び、所定の位置にセットした。
「よし、あとは装置を動かすだけだ。メリッサ、お願い」
「うん……」
メリッサが大きなレバーを引くとデザートフォーミングマシンは低い唸りを上げて動き始めた。
床に散らばる砂が振動で飛び跳ねている。
コントロールパネルに光が灯り、地下水が少しずつ汲み上げられている様子が映し出された。
地上に水が届くまではあと三日かかるようだ。
「メリッサたちは先に戻っていてよ」
「セラは?」
「ゴーレムたちの修理と改造をしていくよ。デザートフォーミングマシンを守らせるんだ」
十二闘神とタロスは念入りに『修理』と『改造』を施して、ここを守ってもらう予定だ。
デザートフォーミングマシンを起動したことによって魔結晶の採取率が下がるので、帝国がちょっかいを出してくるかもしれない。
たとえそうなったとしても、ゴーレムたちが組織的に抵抗すれば、きっと撃退できるはずだ。
「わかった。先に戻っている。予定通りデザートフォーミングマシンのことはとぼけておく」
僕らは自分たちがデザートフォーミングマシンを起動したことを宣伝しないことにした。
帝国と表立って衝突したくはないからね。
デザートフォーミングマシンと僕らは無関係、そういうことにしておくのだ。
「そのためにも
十二闘神の装備を僕が改造すれば更なるパワーアップもはかれるだろう。
そうすれば帝国だってそうそう手は出せない。
そもそもエルドラハと帝国本土の間には広大な砂漠が横たわっている。
大軍を送ってくるのは不可能だから、守るのはたやすい。
対馬海峡の幅は二百キロくらいだったかな?
おかげで近代まで日本は他国に支配されることがなかった。
それと同じことだ。
◇
一週間後、地上に戻った僕らを監獄長の放送が出迎えた。
《聞け、クズども。またもや魔結晶の採取率が下がっている! 水浴びなんぞにうつつを抜かしているせいだ。本日よりグランダス湖での水浴びをすることを禁じる!》
デザートフォーミングマシンのおかげでエルドラハに湖ができたようだ。
しかも監獄長は自分の名前を勝手につけている!?
まあ、名前にはこだわらないからなん何でもいいけどね。
「あら、湖なんてステキね。お姉さんの水着姿を披露しちゃおうかしら?」
サングラスに白いマントで全身を覆い、頭には大きな帽子を載せたミレアが調子づいている。
すべて僕が作った紫外線をカットするための服だ。
これがなければヴァンパイアは秒で燃える。
「死んでも知らないよ。僕の日焼け止めはそこまで完璧じゃないんだからね」
「うっ……、水着姿は月夜の晩までとっておきますか……」
「だったらアタシと泳ごうよ!」
ララベルが元気に誘ってきた。
「さっきの放送を聞いただろう。親父さんに叱られるんじゃないのか?」
「ケッ、親父なんて関係ないよ!」
反抗期だなあ。
でも、久しぶりの地上は本当に暑い。
白熱した太陽はじりじりと肌を焼き付けて、ミレアじゃなくても火傷してしまいそうだ。
「そうだよなあ、監獄長は横暴すぎるよ。湖はみんなのものなのに。……よし、泳ぎに行こうか!」
僕らは荷物を置いてグランダス湖に向かった。
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