第48話 修理と改造


 戦闘前にスキル『料理』を使って、能力の上がるランチを作った。

とっておきの金晶を配合して、全体的なステータスアップを望めるフカヒレスープだ。

フカヒレはもちろん、サンドシャークの背びれを加工・熟成したものだ。

効果の持続は二時間だけど僕の戦闘力判定はAプラスまで上がっている。

これならいけるだろう。



 戦いは昼から始まった。

僕らがとった戦術は単純だ。

敵を複数で囲み各個撃破する、である。

この作戦のキモは、ただでさえ強い敵を連携させないに尽きる。

よって、戦力の逐次投入はない。

僕らは聖杯の間に配下のゴーレムたちを一気に突入させた。


 戦いに当たり、デザートホークスや黒い刃の武器にはすべて雷属性を付与した。

頭部に絶縁体コーティングがされているとはいえ、ゴーレムの弱点は雷撃に他ならない。

数の力で身動きを取れなくして、地道に雷撃を叩き込むのが手っ取り早い。


 だが十二闘神は強く、戦いは難航した。

先陣を切ったポピュラーナイトが次々と討ち取られていく中で、ようやく僕のサンダーウィップが杖の闘神の首に巻きつく。

すかさず最高出力の雷撃を送ると杖の闘神の動きが鈍くなった。


「今だ!」


 シドのマテリアルクロスボウがサンダーボルトを連射する。

続いて躍り上がったリタの剣が紫電を放ちながら杖の闘神の眉間を傷つけた。

バリバリと音が鳴り響き、杖の闘神の巨体が前のめりで沈んだ。


「リタ、怪我はない?」


「私は大丈夫。それよりも次を!」


 いちばん近くの戦闘に目をやると、槍の闘神を囲んでいたタンクタイプが胸を突かれて沈黙しているところだった。

早く救援に向かわないとあそこの隊は全滅しそうだ。

そんな混戦の最中さなかをメリッサが僕のところまでやってきた。


「セラ、うちの治癒師の魔法が追い付かない。あれの相手は私がするから、怪我人の治療を頼む」


「メリッサ一人で大丈夫?」


 心配する僕だったけど、頭上からミレアに声をかけられた。


「地味子ひとりじゃ不安だけど、私がいるから大丈夫よ」


 メリッサとミレアのコンビ? 

決して仲がいいとは言えない二人だけど、実力的にはツートップだ。

連携さえうまくいけば手の付けられないくらいの強さを発揮するだろう。


「仲よくやってね」


「努力する」


「後でご褒美をお願いね♡」


 メリッサとミレアは競うように槍の闘神へと向かっていった。


 戦いが始まってから一時間が経過した。

聖杯の守護者たちは強力で僕らは苦戦を強いられている。

だけど、あることがきっかけで潮目が変わった。

討ち取った杖の闘神に『修理』と『改造』を施し、前線へ投入したのだ。


 時間がなかったので細かい指示を出せるほどの改造はできていない。

でも『剣の闘神を倒せ』という指示だけを与えて送り出すと、戦況は一変した。


 本来であれば剣の闘神と杖の闘神の力量は互角だ。

けれども、杖の闘神には僕たちのバックアップがある。

さほど時間もかけずに剣の闘神を抑え込んでしまった。

杖術には捕縛の技があるのもよかったのだと思う。

すかさずリタとタナトスさんが頭部に雷撃を与えて、剣の闘神は沈黙した。


 こうなればもうこっちのものである。

杖の闘神には斧の闘神を捕まえるように命令を出し、僕は剣の闘神の『修理』と『改造』に乗り出す。

やがて、剣の闘神も僕らの傘下に入ると、戦況は加速度的に僕らの有利に進むのだった。

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