第10話 新スキル
地下三階にたどり着いてからも戦闘の連続だったけど、オークキングを討伐したことで僕らは自信をつけていた。
あれが倒せたのだから大抵の敵は怖くない。
現れるモンスターを
「ハアハア……」
リタの息が上がってきたな。
そろそろ休憩をとった方がよ良さそうだ。
それにしても僕はちっとも疲れないぞ。
重力の呪いに苦しみながらポーターをしていたせいで、驚くほどスタミナがついてしまったのだろう。
安全そうな小部屋を確保して、僕らは小休憩をとった。
二人で壁にもたれて水筒の水を飲む。
戦闘の余韻で僕らはまだ興奮していた。
「うふふ、ここまでくればあともう一息ね。セラが一緒でよかった。私だけだったらきっとやられていたわ」
「僕もリタには助けられているからお互い様さ。疲れてない? 痛いところがあったら遠慮しないで言ってね」
「平気よ。それにしても、こうしてみると私たちっていいコンビよね」
リタがにっこりと笑いかけてくる。
いいコンビか、確かにその通りだ。
ここまでずっと息の合った連携が取れていたと思う。
「ねえ、セラ……」
普段は
「どうしたの?」
「今後も私とチームを組まない? 二人ならうまくやっていけると思うの」
「いいね! 僕もリタと一緒なら嬉しいな」
「ホント!? じゃあ、次回は二人で……」
「あと、僕の友だちのシドにも入ってもらおうよ!」
「えっ……?」
「今はお爺さんだけど、元は腕のいい斥候(スカウト)だったんだよ。ダンジョンのことにすごく詳しいんだ」
「そ、そうなんだ……」
リタはなんだか浮かない顔をしている。
さてはシドの実力を疑っているな。
「地理や、トラップにも詳しいんだ。ちょっぴりエッチな人だけど、きっと役に立ってくれるはずさ」
「うーん、わかった。セラがそう言うんだったら入ってもらおう。ちょっぴりエッチってところは気になるけどね」
「あはは、大丈夫だよ。シドだってチームの女の子を変な目で見たりしないから」
たぶん……。
「そうそう、さっきの戦闘で剣が刃こぼれしちゃったんだけど直してもらえるかな?」
「うん、見せて」
硬い殻をもつポイズンマイマイを相手にしたので、そのときに欠けてしまったようだ。
戦闘が続いたせいで、剣や防具を修理するのも慣れてきた。
修理の時間もだいぶ短縮されたぞ。
「随分と手際がよ良くなってきたね」
「もう二十回以上はやっているから……あれ?」
ふいに、頭の中で声が響き、新しい扉が開かれた気がした。
(おめでとうございます、スキル『改造』を習得しました!)
おお、新しいスキルが使えるようになった!?
「どうしたの、セラ?」
リタが心配そうに僕の顔を覗き込んでいる。
「新しいスキルが使えるようになったんだ。きっと『修理』をたくさん使ったからだね」
「それはすごい。普通はこんなに早く次のスキルを覚えることはないのよ」
「そういうものなんだ……」
いままでスキルに縁がなかったから、習得スピードも速いのかな?
「今度のはどんなスキルなの?」
「『改造』っていうスキルなんだ。これまでは修理しかできなかったけど、物を改造してグレードアップできるみたい」
「じゃあ、私のウェストを細くしたりもできるの!?」
「あはは、それは無理だよ。今のところ『改造』は物にしかできないから」
「なーんだ」
「そんながっかりしないでよ。これはこれですごいスキルだと思うから」
僕は拾った弓を取り出した。
「弓? どうするつもり?」
「まあ見てて」
ダンジョンの魔物は強力過ぎてこの弓では太刀打ちできない。
でも僕には前世の知識がある。
それを改造に応用すれば……。
初めての改造ということで悪戦苦闘してしまったが、二十分ほどで新しい武器ができあがった。
「随分と妙な弓ね。両端に滑車がついているけど……こんなの初めて見る」
「これはコンパウンドボウっていうんだ」
たしか二十世紀のアメリカで発明された弓だ。
狙っている間の保持力が少ないので、安定した命中精度を誇る。
初速も普通の弓より速いので威力も上がっているのだ。
しかも僕はこれに魔法効果を追加してさらなる威力の向上を図った。
滑車に描いた魔法陣が回転することによって無属性の魔力が力学的に作用するのだ。
地水火風の属性魔法を付与してもよかったんだけど、敵となる魔物との相性もある。
弓自体は汎用性の高いものにして、属性は矢の方につけることにした。
適応する魔結晶があれば矢だってすぐに改造することができるはずだ。
「おお、これすごいよ! 面白いように矢が的に当たるもん!」
試し撃ちをしたリタが喜んでいる。
「多少の魔力は取られてしまうけど、威力は保証するよ」
「実戦でも使えそうね。私の分も作ってくれるの?」
「うん、すぐに取り掛かるね」
二人分のコンパウンドボウを作って戦力を増強した。
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