罪な守係3









「ぼくは花壱、目代めじろ花壱はないちです!



梅人様のみぎうでです、これからながい付き合いになると思うのでよろしくおねがいします!」




















長い階段の丁度中間地点、そこでその人は止まってクルリと私達の方に体を向け





その恐ろしく整った顔を綻ばせて口を開いた












「あ、相生文です…今日からカミさんの部下として働き始めました、よろしくお願いします」




「カミさん?あっきみのこと!へぇ名前つけてもらったんですか、良かったですね」




「……とても気に入ってますよこの名前








もっと深く紹介しますと、花壱殿は梅殿の拾い弟子でして文さんと同じ元人間だった幽霊です」



「あ、どうりで……」








神さんから私の方を見てニコニコと笑っている目代様の方に視線を移すと、思い切り目と目があった。



鶯色の綺麗なつり上がった目に光が灯ってなくて、人間性を感じさせなかった



いや顔が美しすぎて、というのもあったけど一番はあの瞳だ







が顕著に表に出て分かる











「彼は明治から大正にかけての人間だったのですが、何がとは言いませんが徐々にとある現状が顕になり学校の内乱に巻き込まれ


後ろからグサリと刺されて死んだらしいです



なのでこんな幼児の姿をとっていても私や文さんよりうんと年上で、本来なら高校生くらいの姿なんですよ


神域で仕えると言う理由で子供の姿になってるだけです、ですからいくら幼子と言えど油断してはいけませんよ?良いですね?」






「え、あ…は、はい……」






カミさんからの圧がすごい、そこまで念を押して言うことなのだろうか?



油断て……私そんな恨まれるようなことした覚えないんですが、多分







「本来なら神域の守係というのはそれ相応の実力者でしたら一人でつくものなんです




梅殿は我が社の中でもトップクラスの実力を持った契約従業員なので実は一人で充分なのですがね、どうやら梅殿が突然花壱殿もやらせろと言って十年間駄々こねたらしく……



社長が先に折れたようで、あの神社は梅殿と花壱殿が二翼一対で守係を務めてるんですよ」





「なにごともけいけんだ、とか言ってぼくをあとつぎにするためにさせられてるんです」









そんな裏話が……というかそれを承諾しちゃった社長も凄いですけど、十年間ずっと駄々こねていた梅様も何気にすごいですね



というか目代様何気に大爺さんじゃないですか



いやまぁ死んでるから年齢とかもう関係ないですけど










「多分!恐らく!滅多に起こりえないでしょうが、絶対にそんなことはさせたくは無いのですが



私が不在の時、もし外勤通達が来たら私に連絡を下さればこちらから花壱殿に道案内をさせるように言っておきます




は決して道に迷う事がないので」







「?はぁ……よ、よろしくお願いします」



「よろしく、あやちゃんって呼んでもいい?」



「え、はい…お好きなようにどうぞ…?」









私の返事を聞いて目代様はまたニコリと笑ってまた残り半分の階段を降り始めた



カミさんも後に続くように、まだ私を抱えあげたまま階段を降り始めた。











「そして梅殿に関してなのですが……」






「カミさん?」
















何故か口篭るように言葉を止めたカミさんに首が自然と傾く



もしかして梅様に関しては言えない情報とかあるのかな?トップクラスの実力者って言うこともあるし、情報の流しがキツイのか




















「………あまりお一人で梅殿の元へ行ってはいけませんよ、文さん」



「え?」




















「私からのお願いです、絶対に…緊急事態以外では一人であの方の元へは行かないでください





花壱殿でもいいので必ず、誰かと同伴でお願いします













絶対に」












私を抱えて支えている手に力が強くなって、思わずカミさんの顔を見上げると






仮面越しでも何故か分かってしまうほど






思い詰めた雰囲気のカミさんの仮面が、夕日の影に隠れながら私を優しく見下ろしていた















骸が、私を見つめていたんだ


















































































    「■■…さ……ご、め」  







































「梅様さんざんいわれてる、おもしろ」




「君も大概戦犯ですよね花壱殿、主人が色々言われても止めないあたりが特に」




「おちゃめですよおちゃめ、このてーどなら梅様ゆるしてくれる」





「あの人子供には優しいですからねぇ……文さん?どうしました、ボーッとして」





「……へっ?あっいえ、少し考え事を」



「かんがえごと?何かんがえてたのあやちゃん」








何を?……あれ?えっと、なんだっけ?






何考えてたんだっけ?うーん……数秒前の事、だよね?記憶が正しければ



なのに何も思い出せない……というか私本当にボーッとしてた?霞みがかってる所じゃなくてこれは…消えた?





数秒前の一瞬の私だけが消えた?









「あやちゃん……?」





「!今日の夕飯悩んでました、この時間じゃ作っても間に合わないでしょうし……」




「あぁ……文さんの手料理は上手ですからね、それは残念です」





「!ならぼく良いお店しってますよ、かいしゃのすぐ近くなのでれっしゃごいっしょしますね!」











いいですか?の疑問形でなくて、しますね!の確定形なのか



というかそろそろ下ろしてもらいたい、何気に階段降りきって今普通の道歩いてるのバレてますからね?



下ろしてもらおうと足を動かしてみても下ろさんと言わんばかりに力をさらに込めてくるし





多分これカミさん自覚ありますね




どんだけ私を下ろしたくないんですか















「あっ!あやちゃんアレルギーとかだいじょーぶですか?」




「え?あ、だ、大丈夫…です」




「よかった!おいしいお店なのにいっしょに食べれなかったらかなしいですもんね


では行きましょー!!」





「何でアンタが仕切ってるんですか、花壱殿」

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