罪な守係2




「なんじゃ、もう帰るのか?儂はまだ文と話してたいぞ……?」




「あの……」




「………仕事でこちらに出向いただけですので、もし何か縁があればまた此方に来ますよ」









梅様?の尻に敷かれていた気絶した規律違反者を何処から取り出したのか分からないお縄でカミさんがグルグルと巻き上げて、ようやく正式回収。



そしていざ帰ろう、という時に





何故か梅様に服の裾を掴まれては子供特有の潤んだ可愛らしい瞳と顔で私を見上げてはその場に残れと遠回しに指示してくる


カミさんは私の肩を抱き寄せて何故か淡々とした声で喋っては梅様を見下ろしている。








梅様可愛い…可愛いけど今は仕事中…カミさんの言う通りなんです!!心が多少痛むけど断るしかない



というか梅様明らかに見た目子供だけど確実に私やカミさんより年上ですよね??





え?やっぱり外見って大事なんですかね?


















「そんなに大事か、童よ」










「……えぇ、担当ですから大切ですよ












「ほぅ?それはそれは……お主からその様な言葉を聞けるとは思わなんだわ、意外や意外





これまた面白いものを見せてもらったわ」













私を挟み、上下の位置から物凄い威圧とプレッシャーを出すのやめてもらえません?プレスされそうで色々怖いんですけど……



というか一体何の話ですか?主語なくね?

なんでそれで会話出来てるんですか?














「………あっそう言えば狛犬達は何方に?怪我をしたなら私達が一時的に預かり社内医療課で治療させますけど…」






「いやよい、そうまでせんでも彼奴らはこの神域内だったらすぐに治る



それよりも帰りには送りのものを付けようか




行きは良いが帰りは怖いからのぅ……」








そう言って狩衣の袖で口元を隠し目を軽く細めカラカラと笑い、一つ手を叩いた




行きは良いが帰りは怖い、か……矢張りあれは迷信じゃなかったって事なのかな?梅様が言うのであれば









「花壱、花壱や」












ハナイチ?


























「はい、梅様」




「おぉ何処におったんじゃ花壱、お客様がお帰りじゃからあのビルに着くまで送ってやんなさい」



「はい、梅様」














梅様が手を一二度叩けば沢山の花弁が風に乗って梅様のすぐ隣で渦を巻き、気付くとそこにはつり目で鶯色の瞳とはねっ毛な天鵞絨色の髪


カンテラ片手に持った礼装の少年がいた






女の子って言っても過言じゃないほど顔が整ってる……でもここに居るってことは生者じゃないよね


さっき凄い登場してたし





この子が私達を送り届けてくれる人?








いや梅様に頼まれてるあたりちゃんと強いんだろうけど……何か凄いなぁ…
















「帰りは転ぶなよ、お二人さんや」







「はいはい…さ、帰りますよ文さん」



「あっはい……お、お世話になりました!」













階段を降りて先に境内から出ているその子の後を追うように慌てて梅様に挨拶をしてカミさんに腕を引かれながら神社の鳥居を潜る。






























去り際何となく、何の気なしにだけれど




















私の何かが引っ張られるように繋がった気がして





























最後にチラリと梅様の方を振り返ると




































「…………」



























薄らと、何かを思っているような笑みを浮かべて私達に手を振っていた。









……梅様は不思議な雰囲気がある、初対面の私でも何故か長年顔を合わせてきたかのような気がしてくるんだ




この感覚はさっきの梅様に引き込まれるような感覚と少し似ていて比になる





























「久々ですね、きみがここに来るの」







「梅殿も君も余り変わりないようで安心しましたよ、梅殿の悪い所は少しは変わっていて欲しかったけですけれど」






「だよね、ぼくもそう思う…でもアレはもうどうしようもない



所でそのツレの女の子が担当してる子なんだって?意外だね、きみってそーゆうのまっとうするまでにはせいちょうしたんだ」





「まぁ、君達と比べて私はどうやらまだ童のようでしてねぇ……成長しているのさ」





「ハハッ!ちがいない」













神域の境界を出ればいつの間にか空が橙色と藍色に支配されていて、辺りが生暖かく眩しい夕日に包まれていた



そんな中、カンテラに灯りをつけた案内人さんが先頭を歩き階段を下りていく。











拙い喋り方、梅様とは違って見た目相応……と言うよりもほんの少しだけ呂律が回ってない気がしなくもない様な……




梅様も謎だけれど、この人も謎








というかシレッと今梅様の事アレって言った?















「そういえばぼくとそこのきみ、しょたいめんだね」



「あぁそうですね……何、これからもこの方々にはお世話になるかもしれませんから梅殿と花壱殿の紹介をしましょう」



「あっえ?……お、お願いします」







ずっと階段を降りていると膝が笑ってきたのをいつ気付いたのか、そしてなぜ気づいたのか



カミさんに抱えあげられてそのまま、そう







何故かそのまま紹介の流れになってしまった




え、このままするの?

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