初の出勤5




暫く列車の中で揺られて、二時間ほどしてある駅に止まった


カミさんがその駅で降りると言って静かに着いていくと、そのまま駅のホームを出て現世……顕界のちっとも変わってない街並みを歩いていく。



遠くに見えるのは福岡タワーとヤフードーム…じゃないこれは古い、ならヤフオクドーム(※平成後期の福岡ドームの名称)




ここ……福岡市じゃん、しかも百道浜



ここって確か列車通ってなかったけ……そういえば、列車から降りた時チラリと見たけどいつの間にか列車の外見が電車に変わってた



まぁこのご時世本来無いはずの列車が通ってたら怖いしホラー案件だから不思議じゃないか



 



 


成程、普段はこれを使って人間にバレないように顕界に来てたのか



 






「何処に行くんですか?」



「福岡の西側ではお世話になる神社ですよ、鷲尾愛宕神社って知ってますか?


日本三大愛宕神社で有名な所です」



「かき氷が美味しかったです」



「何でかき氷の方が印象強いんですか?」







仕方ありません、実体験ですし


本当に美味しかったんですからね?今まで食べて来たかき氷の中で一番記憶に残ってますし美味しかったしとても豪勢でしたから



福岡……懐かしいには懐かしい、とでも言っておこう





私は訛りが比較的少ない方だし…考えるのはよそう、今は仕事中だ。









「……緊急事態、とは一体どういう事態なんですかね?」



「そういえばあのバ課長何も言わずに私に場所だけ伝えただけですもんね……何なんでしょうか」







バカ長……カミさん、時折見せる毒舌が凄い


私にはそんな事言わないけど、多分どっちもカミさんの本当の性格なんだろう、これはこれで面白いから好き





……いやそうじゃない、仕事だ仕事







 



「彼処は神社で神域……且つ守り係が居るのでそう滅多にトラブルは起こらないはずなんですが


と、ここからは階段です……文さん」




「?」










暫く歩いて、鷲尾愛宕神社の手前まで来たら目の前には長い階段が現れて足を止める。







すると何故かカミさんが私の方を向いて腕を何かを受け止めようとするかのように広げた



え?え??何事?








「こう長いと文さんは疲れてしまうでしょう?貴女は死んだとはいえ生前体が弱く体力も少ない……


万が一があってはいけませんから」






「いけませんから……?」






「運びます!」



「何を?」



「文さんを!」



「誰が?」



「私が!」














































「何してるんですかカミさん、置いていきますよ?」



「文さんせめて何か言ってください…!!」






さも当然かのように腕を広げて言うカミさんの横を通り過ぎ先に階段を昇っていく。



暫くすればカミさんも追い付いて二人並んで階段を登る、というか本当にいつ見てもここの階段多いな…



いやここに限らず福岡は意外と坂が多い



佐賀を挟んではいるけれど長崎とは日帰りで行けるほど近いし、博多とか天神とかそこら辺を無しにしたら普通に福岡も田舎な所が多い


というより自然豊かなところが結構残っている。



だから福岡って意外と山とか坂とかが多かったりする




だからこの程度なら多分私でもギリギリ、本当にギリギリ行ける……と思いたい







「………もしもの時は頼みます、カミさん」



「!はい!!任せて下さい!」







カミさん、やけに上機嫌



今日はなんだか途中からテンションが高いね、どうしたんだろ












暫く階段を登って、中間地点あたりに来た時だった






ジジッと……まるでブラウン管のテレビのチャンネルを変える時に鳴る小さい音のようなものが聞こえて、全身何かに包まれるような感覚がした





一本足を後ろにやろうとしたけど階段だからそれが出来ず、よろめくが何とか踏ん張る








「?今のは……」




「神域到着の合図です、生者は偶にこれを感じとる人もいますがほとんどは感じ取れない結界のようなものです



私達はもう顕界に生きるものでは無いのでそれを見て感じ取ることが出来るんですよ」



「成程……」







パワースポットとかよく言ったものだが、成程納得だ、これなら確かにパワーがあったり神聖な空気を感じ取ることが出来るわけだ



これのせいだったのか

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