初の出勤4

 




「そうだカミさん、これ一通りまとめ終えたんですが……何処か不備が無いかチェックお願い出来ますか?」






行儀悪いのは承知だけれど、矢張り早めに終わらせれる物は早くに終わらせて後々楽したいというか肩の荷を少しでも下ろしたいから


食べかけのメロンパンを袋に戻してデスクに置いて、ファイルをカミさんのデスクの上に置かせてもらう



これが終わったから……不備が無い場合は次は、回収の道具が無いか在庫チェックしに行きましょうか。





 



「流石文さん、作業が早くて助かるよ


じゃあお昼ご飯食べ終わったらチェックするから、僕がその作業中は君は在庫チェックをお願いできますか?」



「はい!頑張ります!!」








胸に手を当ててドンと来い、という意思表明をする。ドンと来い



初出勤だからと言えど何れやることは皆同じなのだから早めに慣れておいて損は無いです










「そうですね!(うふふ、胸張ってる…可愛らしい)」




(どうしよう、先輩の考えてる事が分かる気がする……怖い…)

















「あ、文君!文君ペア!!ちょっと良いかな!?」






それからほのぼのと会話しつつ昼食をとっていると何やら慌てた様子で課長が降りてきて私達の元に駆け寄ってきた。


そんな課長の手に握られているのは顔写真が着いたなにかの一枚の紙


課長、慌て過ぎているのかその重要そうな紙を思い切り握り潰して一見使われたこよりティッシュのようになっているけど……



重要な書類じゃないのかな?













「チッ……もう何ですか課長?僕達まだ昼食中なんですが」





「え今舌打ちした?ねぇ??」





「僕達まだ昼食中なんですが」





「二回言った……あっそうだよ、初出勤の文君には悪いんだけど緊急事態が起こっちゃってね


今から君達にはその対処に向かってもらいたいんだ」






 




 





 

「それはつまり」



「外勤」



「文さんは?」



「初勤」



「やかましいッ!!」



「理不尽ッ!?」







コントでも見た気分、というか私初勤務で外勤を体験……というかカミさんと一緒とはいえ任せられる事になるとは



いや案外現世の社会に出たらこうなのかも




いやだとしても最初はパソコンでの作業とかをして慣れていって……が優先なんじゃ?そう考えると初出勤の私が向かうって本当に緊急事態なのかな。






 

「あの……因みに聞くんですけど、その現場って私何をすればいいんですか?」




「え……あーそうだな…その現場にもよるけど今回は現世だし、君!状況みて文君に指示を出してあげなさい」



 


「分かりました、それでは行きますよ文さん」



「は、はい」




 

「先輩と文ちゃん気ぃつけてね〜」




 



 



 


緊急事態だと、現場というか現地というか、外務の場所に出ることになってカミさんに手を引かれてオフィスを後にする。



出る前にジュン先輩と目が合って手を振ったら振り返してくれた、嬉しい



 


死んでから初めて現世に行く事になる、地獄の沙汰も金次第とは言うほどだ


現世では余計に全て金で溺れては左右される、好きな現世がこれ以上汚くなるのを見るのが嫌で死んだのも理由の一つ。


私が死んでから、一体どれだけが増えたんだろう



考えたくも無い 。




 




 








「文さん覚えておいて損はありません、今から私の言う事する事よく見て覚えておいて下さいね、不本意ですがこれから一人で外務に行く事もあるでしょうし……」



「はい」





「場所や時間によりますが今回私達は列車に乗っていきます


現世ではまだ列車は普及していますが文さんは乗ったことないでしょう?」



「そうですね」



「なら丁度いい……生憎現世とここの列車と電車の乗り方は少し違いますから気を付けてください




先ず身分カードを受付に出します、文さんのも出しますから貸してください」


「はい、どうぞ」









現在居場所は何処かの駅。



オフィスから見える程大きな少しレトロモダンでレンガ造りの駅に私達はいる


まるで東京駅だ



私東京に住んでなかったから生で見た事無いけど、写真越しでなら知ってる




 




取り出した自身のと私の身分カード……ジュン先輩曰く現世で言う社員証とか学生証、そして保険証をこれ一個で担ってくれるスグレモノ、らしい


正直これがどういうものなのかジュン先輩もあまり良く理解出来てないんだとか、駄目じゃんね。




その身分カードを受付の方に渡したカミさん






「こちら往復一回分で宜しいですね?」



「はい、席は一車両目でお願いします」



「分かりました……どうぞ、乗車券になります」




 





ガラス越しに身分カードを受け取った受付さんは何かの機械にカードを差し込んでパソコンで何かを打ち込んで、三十秒ほどでカードを乗車券と共に私達に返した



往復と回数、そして行き場の駅までの情報が印字された乗車券は和紙で出来ているのか少し不思議な手触りだ。








「乗車券を受け取とりましたね?そしたらそれをこのブース内の機械に投入、出て来たら取って


後は何か軽い食べ物でも買って列車の中で食べるなり、寝るなり、自由にです」



「この機械はなんですか?」







ブース内に入って乗車券の投入口に入れながら機械の外装を触ってみたり、観察する



鉄……いや、見た目や音と匂い的に鉄っぽいけどこれはそれより硬度が上で丈夫、多分中にはずっしりとした機材が入ってるに違いない。




ふむ……分解してみたいけど怒られるし今回私達は観光じゃなくて外務に来てるんだから出来ないのも当たり前ですね




残念……




 






「これは火車や朧車が交通便をサボって、よりよく効率的に顕界に行けるように考えた結果



トンネルや人が場所に繋がる古き良き列車……



廃棄処分される事になった顕界の列車をこっちに持ってきて境界を軽く繋げる為の交通便を作ったんですが


それだけならいいんですが如何せん利用者が多い、自由奔放過ぎる方が多いと管理会社に苦情が相次ぎ苦肉の策として導入された機械です


サボりがち……というか気ままで飽きっぽい受付にいる日本妖怪の対策として、自動でもぎりと改札をしてくれて


停車駅をリサイクルついでに列車に組み込まれた機械にインプットしてくれる優れものです




これだけで一体どれだけの管理会社の方々が助かったか……」




「それだけ聞くとブラックがホワイトになった経緯を聞かされた気分です」




「実質そんな感じですよ」




「なんてこった」






というかガラスの反射で良く見えなかったけど受付してくれてる方って妖怪だったんですね、しかも和製



というか列車がここに導入される前は車や荷車系の妖怪が交通便してたんですね……



軽い劇的〇フォー〇フターを聞いた感じ





 




「列車乗ってみたかったので楽しみです」




「それは良かったです……外務の方が済みましたらここの駅散策してみますか?」




「!良いんですか?」




「課長も文さんの事でしたら許してくれるでしょう、大丈夫です


社会見学という大義名分が有りますから!」





「流石カミさん、抜け目無い…!」




「ここの駅には沢山お店がありますよ、服や本や飲食店、コスメ、スーパー等々


早く外務終わらせるようにサポートします



頑張りましょうね、文さん!」



「はい、カミさん!」

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