初の出勤2
部類を分け、その分の書類を纏めファイルに入れて棚に入れていく。
私の今日の初の仕事は主にこれだ
カミさんに言われた通り速読をして暗記をして、情報と資料を照らし合わせて間違ったものは違うカゴに、という簡単だけど地味にやりがいのある作業でもある
案外楽しい
「文さん」
デスクの上に次々に載せられていく資料の仕分けをしていると、突然目の前のデスクに座っていたカミさんが私の背後に立ち肩を叩いた。
瞬間移動したのかと思った…あー吃驚した
何でしょうか?まだ全部資料分けが終わってないんですが……
「何ですか?カミさん」
「集中し過ぎるのも難ですね……お昼です、今から下に行って私と文さんの昼食を買ってきます
何かリクエストはありますか?」
「……あ、もうそんな時間…」
カミさんの苦笑いするような声で時計を見ると12の数字を短針と長針が通り過ぎていた
まだ感覚的に10時程度かと思ったのに
というか未だにこの世に時間の概念がある事に驚きなんだけど
「あっ……と、その…私は大丈夫です」
「大丈夫じゃ分かっ……そうですね、確か文さんはメロンパンや駄菓子が好きでしたね
待っていてください、買ってきますから」
「え?あっカミさん…!?」
何かを言おうとして直ぐに口を噤み、また柔らかい微笑んでるかのような声で私の頭を撫でて駆け足でこの場から離れていったカミさん。
え…私、いらないのに……気を使わせてしまっただろうか
どうしよう…次からもっと違う、そうだ気を使われない言葉を選んでちゃんと断らないと
と、取り敢えずカミさんが戻ってくるまでにはこの上にある資料を出来るだけ片付けておかなきゃ
「猫まっしぐらならぬ先輩まっしぐら」
「ンブッ!!」
「あ、吹いた」
「!ご、ごめっ…さ…!!」
痙攣して上がってしまう口角を隠す様に口に手を当てて必死に笑いを殺す
不意打ちはやめてもらいたい
私の笑いのツボは可笑しい上に異常なほど低いから基本くだらないことでもツボるんだ
だから気をつけてたのに……!!
殆ど見知らぬお方の言葉に吹くだなんてはしたない上に恥ずかしい…首切って死にたい!
変な風に思われたらどうしよう…生きていられない、もう死んでるけど
罪悪感とか羞恥心とか絶望感とか混ざって何とも形容し難い感情だ……うぅ、もずくになりたい
「改めて…だよね?」
「………」
ヒョコリと向こうのデスクからまた顔を出して、今度はそのまま席から立ち上がって私の前にしゃがんだ三上さん
……やめて欲しい
私なんかと会話なんかしない方がいいし、私も極力会話したくない……変に迷惑かけるし三上さんの時間の無駄だし
目は合わせない、カミさん以外は仲良くならなくてもなるべく良い
でもちゃんと会話しないとそれこそ相手に失礼…だよね?なら会話しないと…
なるべく顔に出さないようにしないと…
眉間に力を入れるのは私の悪い癖だから気をつけないと
「僕三上ジュン言います、よろしくなぁ…えっと」
「…っあ……ぃ、相生文…です」
顔と体は三上さんの方に向けながら、視線だけはどうしてもやっぱり端に行き目と目が合うのをズラしてしまう
死ぬ前も合わせてここ最近、カミさん以外でまともに目と目が合うことなんて無かった
というか合わせれない
相手には失礼ってのはわかってるけど本当に無理……こんなんだから母さんから子供だのダメダメだの言われるんだ
「相生って呼んだらさっき課長睨まれてたから〜……あ、文ちゃんね!
僕の事は普通にジュンで良いからね〜
多分死亡年も僕と近いだろうし仲良くしようなぁ」
カミさん相手とは少し違ってねっとりおっとりした口調をハッキリ出して喋る三上さ…ジュン先輩。
何処か訛りを感じる……関西では無いな
九州とかかな?
「文ちゃんはさ、なんで身投げなんかしたの?そんな若さでさ」
この人凄い単刀直入だな
「………取り敢えず、親元から離れたかったから…?です」
「すっげぇあやふや、なんでそんな自信ないのさ」
いつの間に買ったのか冷たいココア缶片手にケラケラと人が良さそうな笑顔で言うジュン先輩。
あやふや……まぁ、前提と建前なんて所詮そんなもんですよ基本
「……後、面倒くさくなったってのが本音です」
「文ちゃんって割と気にしないタイプなのね、面倒くさくなったって…そんなハッキリ言っていいもんかねぇ」
「聞かれたら答えるのは常識です」
「まさかうちの課にこんな真面目な子が入ってくるとは……一大事や、皆に教えんと!」
「この課ってそんなに変人ホイホイなんですか?」
「変人ホイホイ所じゃあないんよなぁ、コレが」
「?」
「ここは馬鹿とアホと変人の魔窟とって」
「わぁ、なら私が入ってさらに魔窟になりましたね」
「え」
「私、実は小中高毎年クラス1変人の名を意のままにしてましたよ」
「ばんなそかな」
「それ今知ってる子殆ど居ないでしょうに」
「逆に文ちゃんなんで知っとんの??」
「中学時代、昭和生まれの女というあだ名を持って無かった……ら良かったのに」
「さては文ちゃん悪ノリ大好きっ子だナ?」
「おやバレましたか」
なんやかんや意気投合しました。
「文さんメロンパン買ってきたから食べま…」
「そしてー!」
「かーがやぁくぅ!」
「「ウルト〇ソウッ!!ヘイ!!!!」」
「え………何してるの?君達」
「「え、組体操です」」
「え????」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます