金の亡者4
私の望む場所…?
考えた事もなかった、考えるという事にすら今まで行き着かなかったのだからそんな事を聞かれても答えは出ない。
いや、本来なら出ているのだろう
出ていながら私は今まで……
ソレに気付いた途端に泣きたくなり、何故か思わず骸骨さんの顔を見る。
不確定で不安定な私の意思が何かを言おうとしてるのに、伝えようとしてるのに、何時ものように口から音が出てくれない
コレだ、コレのせいで今まで色々損してきた
早く答えないと
早く答えないと、何処か行きたい場所
行きたい場所?まず私何が…何処に行きたいんだろう、何処に行けるんだろう、私は何処まで行ったら
いや違う取りあえず先に何か言わないと、何か言わないと怒られる…
嫌だ嫌だどうしようどれを言えばいんだろう、何を言えばいいんだっけ…!?うるさいうるさいうるさい!思い出そうとするのに邪魔をするな!!違う!
早く答えを言わないとッ早く…!
早く言わないとじゃないと迷惑かけちゃう、怒られる早く言わないと変な目で見られる…待たせてるのに答えが出てこない、大丈夫落ち着け落ち着け落ち着け!?
「文さん」
「ッ!!」
「大丈夫ですよ、こう言っては何ですが私達はもう死んでいて時間の流れから掛け離れた存在
答えが出るまでゆっくり考えて、落ち着いて自分の中で順を追えるまで
私と貴女の時間は無限です
もし行きたい場所が無かったら他のことをしながらゆっくりのんびり私と考えましょう?」
初めて言われた言葉だった
一緒に考えようだなんて、今まで一度も私の中でも誰かの中でも出されなかった選択肢。
死んでいるのに動悸が激しくて、無意識の内に短い呼吸が口から漏れ出ては緊張と同様で呼吸と同時刻みで頭が痛み始める。
人が苦手だった
人と目を合わせるのが苦手だった
人と会話をするのが苦手だった
人と答えを求めるのが苦手だった
人ととして生きるのが苦手だった
あぁそうだ、私もう死んでるから人間とは違うし急かされる時間も無いんだ。
骸骨さんといると落ち着いて会話出来るのもきっと骸骨さんのお面が目を隠してくれるから
質疑応答で応えを求められても平気なのは骸骨さんの時間が無限だから
私なりのペースで答えを求めていいんだ…
「行き、たい場所……その…」
「はい」
「ご、ごめんなさい…私……」
「今はまだ無いんですね?大丈夫ですよ、これから過ごしていけばきっと行きたい場所が出てきますから」
「これから…?死んでるのにこれからもあるんですか?」
「はい、人間に限らず生命全てには魂があります
魂をこの世に繋ぎ止めるのが魄、言わば生身の体と魂の形成が生命です
基本皆さん死ぬと昇天し成仏して、ここの狭間に来ます、そして担当の者が各それぞれ着いてますからその人と軽く話し合うんです
落ち着くには状況整理が一番ですから
そして自分の置かれた立場を理解した亡者は天国に行き定住するか転生するか
地獄に行き罰を受けて転生するか
基本この二パターンに分かれます、偶に例外もありますが」
何だろう、此処に来て
何でこの会話が一番初めに出て来なかったんだろう……あっ主に私のせいかな?
結構所々話が脱線していたし
「例外……?」
「聞きますか?」
「はい」
私の行動にもし何か影響がある事なら、私は喜んで何でも聞く。
私は私の意思で何かをした事がない
人間じゃなくなった今なら、きっと何か私なんかにも何か出来る事あるかもしれない…多分。
「例外なんですが……あの世、もしくはこの狭間で働きたいと言う方が極たまぁにいらっしゃるんです」
「えっ職!?」
「はい職ですね」
「あるんだ、職……」
「実はあるんですよ、職」
「へぇ……」
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