金の亡者3

 


 

「強い子ですね


では続けます、次は小学1年生

父の本性や幼稚さ

そして姉妹感での険悪な空気と無意識による祖父母と両親からのプレッシャーと差別意識、友達と友達の遠隔な悪口


 


この歳から人間の闇に触れて、目に見えて気付き如何なものかと首を捻ったのですね



相生さんはとても繊細だ」



 

 


 


片手は私の手を掴んだままもう片方の手はまるで壊れ物を扱うかのように酷く優しく私の頭を撫でた骸骨さん。

 


 

死んだはずの体では体温を感じないと思っていたけど、骸骨さんの生暖かい人肌のような温度が頭に伝う


少し、心が落ち着いた気がする。



 


 


 


「そして仕事におわれて気を病み続け、父親の言動にも疲れ果て夜遅く長時間説教される娘に目もくれず干渉しなくなる


そんな母親の背中を見て相生さん、貴女は



 



 

この世は全て金、だと悟った」




 


 

今聞けば苦笑いしそうな幼少期だが、しかしこれら全て事実。

救いようの無い環境に育ち救いようの無い馬鹿な私は幼いながらにそう悟ってしまい今まで生きてきた。だが全て事実だ


所詮人生金の有無でやれることもやれないことも左右される

 

 

何をするにしても絶対に金な必要なのがこのご時世


 



 

私のような経済力やバイトすら出来ない存在からすればこの世は地獄


家族から抜け出したかったけどそれが出来ないのが現実で、それを無視すれば違う地獄が待ち受けてる。


 


 

子供が家にいるのも、家から出るのも金次第



地獄の沙汰も金次第と言う程に



 



 


この世は金で溺れてる。



 



 

 

「……間違ってますか?この感覚は」


 


 


 


ゆっくりと未だに頭を撫でる骸骨さんにそう問い正せば、骸骨さんは一瞬動きを止めてまた直ぐに頭を撫でだした。

 



この人ずっと頭を撫でてくる、落ち着くから良いけど子供扱いをされてるようで少し恥ずかしい。



 


 

「間違ってはいません、一重に言えば相生さんの考えは誰にも否定出来ないほど間違ってはいませんし一理あります」



「…………」

 


 

「ですが貴女が一番よく分かっているでしょうが、人間の意識を人間が覗くなんてほぼ不可能


 

がソコにいる限り、その悟りが誰も肯定も否定も出来ません


 

 

貴女の良い所はその自身だけの悟りを相手に押し付けようとしなかった所


独り立ちしようと、一人で頑張ったのでしょう?偉いですね」



 


 


矢張り子供扱いでもしているのだろうか


幼子を宥めるように褒められては未だに頭を撫でている骸骨さん、とても優しいのだが少し恥ずかしい上に不服ではある。


 


 

………そういえば私は死んだんだよね?なら何故この人は私の言葉を聞いて頷いてるんだろうか。



この人は誰なんだろう?


 



私は死んだのか生きたのか、もしくは臨死してるのか




 



 


「そして小5の頃事件が起きる」




「………離婚」



 

「貴女がお金に執着し嫌悪するもう1つの切っ掛けですね、覚えていますか?」



「はい、良く覚えてます」



 


 


離婚は私がさせたも同然だから


例え誰かが私のその考えを否定したとしても根強く蔓延ってしまったその思考は一生拭えない。


 

嗚呼、お許し下さい………。



 


 


「優しく愚かな相生さんは一人だけその責任と負い目を感じ、次第に疑心暗鬼と人間不信に


自己を過小評価すらせず、全てを否定する様になった



 

そして17歳、その否定癖は自分の命まで否定した………そうですね?」



 


 

「……はい」



 


 


「………相生さん…いえ、この姓は貴方には毒だ



文さん」




 

「?」



 

 


 



 



 




「何処か、行ってみませんか?」




 



頭から手を離して、今度は私の両手を優しく掬って綿飴でも持ってるかのように握り

そんな提案を突然する骸骨さん。



 

何処かって何処だろうか…?


 

まず私は死んでるから地獄に行くか転生するか、なのでは無いのだろうか



それすら選択肢にはないの?



 



 


 


「何処か…?」



 

「はい!この際です、今までの人生で貴女は優しさを忘れなかった、慈愛を持って最後まで周りを想ってきた



自分がいなくなれば、自分が生まれたから、自分が死ねば家族も友達も悲しんでしまうと全てを分かっていながら


矢張り貴女は今後の負担を考え自らを否定し全てを想った



 



 


息抜きしましょう、私もついて行きます



 

一人もいいでしょうが喋り相手がいなければ退屈は牙を剥く、ですので私も同行しますよ



 

何処に行きますか?海?山?それともプールか異世界か天界か


私は貴女の担当です



 

貴女の望む場所へ何処へでも、お連れしましょう」

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