第5話 護衛

Side: Ruri


 私は瑠璃。猫である。

 只の猫ではない。所謂化け猫。そして白お嬢様の護衛である。

 漆黒の毛並みは正に護衛の風格を表し、名前の由来となった瑠璃色の瞳はあらゆるものを見通す。四肢は颯の如くお嬢様のもとへ駆けつけ、爪と牙はあらゆる敵を排除する。


 先ほどお嬢様から連絡があった。どうやら通学路に変質者が出没するので護衛してほしいとのこと。

 通常は私の眷属である猫を見張りにつけているが、その変質者が人外かもしれないのであれば、私が出向くべきだろう。もしお嬢様に不埒を働く輩が現れたなら、生まれてきたことを後悔させてやろう。


 意気込んだはいいが、まだ下校時間には時間がある。

 ならばその変質者なるものを探ってみよう。奴も下校時間に現れるということなので捉えることはできないだろうが、私の眷属に聞けば手掛かりくらいあるだろう。

 ということで、溜まり場にやってきた。

「変質者ですかい」

「ええ」

 ここのボスである雄猫に尋ねる。

「変質者って言われてもねえ、何が変なのか俺たちにはわかりませんで」

 なるほど、確かにそうだろう。

 では追加の情報を与えよう。

「例えば、道端で服を脱いで裸をさらす人間ね。あとは、……」

 いくつか変質者と言われる者のパターンを挙げてみる。それでも猫には人間の行動が理解できないようで、これといった情報は得られなかった。

 まあいい。ダメ元で聞いてみただけだ。

「それでは、妖魔の類は?」

 こちらについては猫の感覚は鋭敏だ。何か知っているのではないかと少しばかりの期待を込めて尋ねてみる。

「いつも居る奴は、いつもどおりでさ。新参は分かりませんがね。少なくとも大きな悪さしている奴ならすぐに連絡がありますよ」

 どうやらこちらも情報はないようだ。

 変質者が杞憂ならばよいが、お嬢様の安全のためできるだけ情報を収集し、必要なら排除しておきたい。

 お嬢様のお迎えのついでにもう少し学校に近い溜まり場によってみよう。


 私はお嬢様の護衛。

 お嬢様の安全に全力を尽くす。

 今回の変質者はもちろん、学校に居る退魔師もお嬢様に危害を及ぼすなら排除する。

 そして、お嬢様の義兄になったあの男。もしお嬢様の魅力にやられて手を出そうものなら如何してくれようか。ふふ、そのときが来ないことを願っているぞ。


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