第4話 友人

Side: Kito


 大学の食堂で、男三人がテーブルを囲んでいるとなんだか悲しくなる。

 俺、日野ひの貴徒きとと友人のの二人、藤村ふじむらさとし佐久間さくま優斗ゆうとだ。

「で、白ちゃんのこと怒らせちゃったかもってしょげてるのか?」

 チャラ男の藤村がズカズカと踏み込んでくる。

「そんなもん仕方ないだろ。生活費を稼がにゃならんのだから」

 わかっている。

「でも、一緒に食事したいってのもわかるよね~」

 佐久間がニコニコとしながら、ほんわかと反論してくる。

「一人で食べるのは味気ないよ~」

 それもわかる。今までは一人で食べることが多かった朝食や夕食を白と一緒に食べるようになった。最初は気まずかったが、少しずつ居心地がよくなってきたところだ。これを崩したくはない。

「ああ、最近やっといい感じでやっていけるようになったんだ。できるだけあの子を悲しませたくない」

 義兄妹というのは難しい。ある日突然、兄と妹ができたのだから。どう接したらいいのか分からなかった。しかも顔合わせしたその日に一緒に暮らせだの言われたのだ。互いに気まずかった。

 しかも妹は人外。人外の祖国を追われてこの国に来て、どういう経緯かうちの母が養子縁組をしたらしい。戸籍とかどうしたのだろうか?

 うちは母子家庭で、母は仕事で放浪しているため定住していない。そんな母が中学生の娘を育てられるわけなく、義兄である俺が預かることになった。

「お~、お兄ちゃんやってるね~」

 藤村が茶化してくる。

「曲がりなりにも兄になったんだから、妹のことを考えるのは当然だろ」

「ブラコン……ってぇ」

 さらに茶化してくるので藤村の眉間を軽く小突いてやった。

 力加減を間違えたのか、藤村が大袈裟に痛がっている。

「何も殴ることないだろ、ちょっとした男同士のコミュニケーションなんだから」

「気持ち悪いこと言うな!」

 額を抑えた藤村が気持ち悪いことを言うのでもう一発必要かと考えていると、佐久間がにやにやとこちらを見ているのに気が付く。

「なんだよ」

「いや、仲いいな~と思って」

「お前も食らいたいか?」

「さてと、次の講義の準備あるから先行くね~」

 拳を佐久間に向けると、さっさと席を立って行ってしまった。

 まあいい、まずは藤村にもう一発。

 そう思って藤村の方を見ると既に遠くに逃げていた。あの野郎。

 ……。

 いつものこと。

 そう、いつものことだ。

 これが瑠璃の言っている穏やかな日常というものなんだろうか?

 こうあることが白にとって良いことなのだろうか?

 白の望んだ生活になっているのだろうか?

 ……。

 分からない。

 分からないが、少なくとも白に危害が加わるものでないのは確かだ。

 そんな日常を送る。

 それが俺と白の望み。

 もしそれを壊すようなことがあれば、俺は全力でそれを取り除こう。

 だから、藤村、佐久間、俺の敵にならないでくれよ。

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