第3話 昼休み

Side: Rei


 見つけたのは入学式のとき。

 たまたま目に入り、すぐに分かった。あれは人間じゃないと。

 なんであんなのがこの学校に居るのかと苛立ちが募った。

 学校生活くらい仕事を忘れさせてほしいと。

 すぐに排除したかったが、私の権限では勝手できないので上司の指示を仰いだ。

 結果は保留。監視に留め、接触もなるべく控えるように命じられた。

 なぜだろうか? 通常は支部の人間が派遣され、すぐに処理されるのに。

 仕方ない。これは仕事。自分の思いはどうあれ、上の指示に従うのが正しいと自分に言い聞かせ監視することにした。

 しかし、すぐに状況は変わってしまった。ある事件を切っ掛けにコチラの事情が露見してしまった。それからは日野ひのしろと直接会話し、不干渉とすることで落ち着いていた。


「要件は何ですか?」

 昼休み、いつもの校舎裏に日野がやってきた。

 周りは人払いの結界を張り、常人が近づけないようにしておいた。

 向こうは人外なのでこの結界は無効だ。そして私は結界を張った退魔師。この学校の一般人が近づけなければいい。

「今朝、先生が言っていたでしょう? 変質者がいるって」

 共通の認識事項から話を始める。多分、この話に絡んでいるから。

「はい」

「その変質者、たぶん人外なの」

 話の核心を告げる。人外のことは人外に聞いてみろとは上司の言。接触を控えろといった言った口が何を言うのかと、苛立ったことを覚えている。

「何か知らない?」

「いいえ、私はそういったコミュニティに属していませんので」

 日野の回答に落胆する。目を見ても嘘を吐いているようには見えない。

 無駄足。上司に対し怒りがわいてくる。

 やめればいいのに、この怒りをどこかにぶつけたくなり、つい要らぬこと言ってしまった。

「まさか、その変質者、あなたの義兄ってことはないでしょうね?」

「……」

 すぐに失言に気づいた。

 日野は表情を変えないが、どことなく不機嫌そうに感じる。

「ごめん」

「いいえ」

 私だってわざわざ波風を立てたくないので、すぐに謝った。

 日野の方もそれほど気にしていないのか、険は取れたようだ。

「話はそれだけですか?」

 日野が確認してくる。

「ええ、それだけ。あとは、私以外の退魔師が複数人派遣される予定だから、変な騒ぎを起こさないでってことぐらいね」

「そうですか」

「ええ、もう話は終わり」

 そう言って結界を解き、校舎裏から離れていく。お昼休みも残り少ないし、ご飯を食べないと午後の授業がもたない。五限目は体育なんだから。

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