第13話 予感
クラスの中が不気味な程、静まり返っている。授業中でさえ、こんなに静かにはならない。それなのにこの静けさは……。
イヤな予感がする……。
これまで大概、僕のこう言う予感は当たっている。何か……何かが起きる。
確信にも近いものを感じながら、僕はノートを開いた。
新たな展開が、僕を待っている事をヒシヒシと感じながら。
「クラスに戻っていろ!!」
怒鳴るように言った浜野先生の表情は、とても緊迫していた。
「はぁーい」
ちょっとイヤそうにしながら、事件のあった教室を出るその時、僕はその教室のドアを少しだけ開いて、動画状態にしたケータイを置いて、クラスに戻った。
クラスに戻ると何があったのか分からず、危機感がまるでないクラスメート達に、僕らは事件のあった教室の事をアレコレと聞かれる事になる。
僕はクラスの黒板にチョークで、少し大きな字で書いた。
ーー自習、だそうです。
当然、あんな悲鳴が聞かれた後で自習なんかする訳もなく、みんなが興味津々で聞きに来る。
「ねぇねぇ、一体何が起こっているの?!」
「向こうの教室じゃ、何があったんだ?」
クラスメートたちの単なる興味心。
けれど現実を知っていい気分になる訳がない。だけど、今僕らが言わなくても、家に帰れば分かるだろう。
迷った挙げ句に、僕は見た事をそのまま告げた。
「隣のクラスで立て篭もり事件が発生してる。その犯人は……山本先生だ」
「なんだよ、それ?!マジなのか?」
「あぁ……」
僕は言葉を少なめに答える。
「こんな状況で自習なんかしてられるわけないだろ?ーーお前ら、早く帰るぞ」
他のクラスメートにも呼びかけ、荷物を抱えて教室を飛び出したのは、クラス委員の渡辺悠紀男(わたなべゆきお)だった。
悠紀男は勉強やスポーツ、何をやらせても常に上位にいる天才くんだ。
もちろんクラスの中でだけじゃない「人気」も、悠紀男にはついてきていた。
悠紀男が帰るなら、先生も何も言わないだろうと
それを見ていたほとんどのクラスメイトが荷物を抱えて自宅に帰っていく。
このクラスに残された生徒は、僕を含む数名の生徒だけだった。
「このまま自習なんかしてる場合じゃないよな?ーーどうする?もう一回、見に行く?」
席に座ってノートを広げている僕にそう語りかけて来たのは、徹だった。
始めは僕が描いた人物像通りの人が、目の前に現れたと言う事と、徹の不気味さにひびっていた僕も、こんな状況の中にいる事で、感覚が麻痺しているのかも知れない。
少し悩んだ挙げ句に、僕は言った。
「よし、行こう!!」
僕らが隣の教室に覗きに行く途中、慌てた様子で佐藤先生が叫んでいる。
「大変です。大変……校長先生、大変なんです」
勢いよく事件のあった教室のドアを開け、佐藤先生が中に入っていく。
「校長先生、大変なんです」
「少し落ち着きたまえ!佐藤先生……一体、何があったんだ?」
「これ……これを見て下さい」
薄っぺらい紙切れを、慌てた様子で佐藤先生が校長先生に渡す。
その途端、校長先生の顔色から血の気が引いた。
その紙切れに一体、何が描かれているのか?その時、僕はその事に興味を覚えた。
これがキッカケになり、またしてもこの事件は大きく取り上げられる事になるだろう。
少年A みゆたろ @miyutaro
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