第7話 デジャブ
この物語は少しだけ進んだ。
僕には単純に楽しみながら、物語を書いている時間が凄い幸せだった。
学校なんていかなくてもいい。僕には物語を書く時間だけがあれば、それで満足なのに……。
学校での何もない一日を終え、帰る途中で僕はそんな物思いにふけっていた。
一日中、ずーっと書いていたいなぁ。
そんな事を考えながら歩いていると、後ろから声が聞こえた。
「あれ?君は……?!」
聞き覚えのある声が、僕の耳にまとわりついて、僕は足を止める。
振り返ると相手を確認した。
「あー、君は……あの時の……!?」
ビックリして僕はそう言って、言葉を失った。
あの時、お母さんとケンカしたと言って、自分の住むアパートを外から眺めていた。
そう、確か名前は……澤口と言っていたはずだ。
「こんなところで、何をしてるの?」
不思議そうに僕を見つめると、徹くんは言った。
「相原って言ったっけ?お前……おかしなヤツだな……?!俺は家に帰るんだよ」
「そっか。そうだよね?」
僕はそう言って話を合わせた。
「ところで、この前はお母さんとケンカしてるって言ってたけど、もう仲直りは出来たの?」
僕がそう問いかけると、徹くんは微かに首を横に降る。
「それがさ……あれからお母さんと話してないんだ。ずーっとケンカしたまま……上手く謝れなくてさぁ……どうしよう??」
困ったような表情になって、徹くんは俯いた。
「大丈夫だよ。素直に謝ったら、きっとすぐに仲直り出来るから……」
何の根拠もない上辺だけのセリフで、僕は徹くんを慰めたつもりだった。
徹くんがその言葉をどう受け取ったのか、それは僕には分からない。
「あ、いっけなーい。遅刻しちゃうー!!」
気まずくなったその瞬間から、逃げ出す為に僕はそう言って走った。
「おい、待ってくれよー!俺も同じクラスじゃないか?!置いてくなよー!!」
後ろから、徹くんが突いてくる。
不意に僕が昨日描いたノートの最終ページを思い出す。
ーーん!?
やっぱりこんな話しを描いた気がするなぁ……。
後で確認してみよう。
教室のドアを開ける。
その瞬間、僕はハッキリと思い出した。昨日僕が描いたところと、ほぼ一緒の出来事が今目の前に起こっている。
……と言う事は??
半信半疑ではあったが、昨日僕が描いた通りの事が起きているのなら、この後、教室に行くと徹くんが僕の隣の席になるため、ガタガタと席移動をしているはずだ……。
そう、僕が描いた物語はすべて現実のものになっているのかも知れない。
事実を確認する為、僕は学校まで急いだ。
教室のドアを開ける。すると、僕は驚きのあまり、手から力が抜けてしまい、持ってきたカバンを落としてしまう。
ーー何コレ?一体どうなっちゃってるの?!
さっき、僕の方が早く走り出したはずだ。それなのに僕が到着するよりも前に、徹くんが学校についていて、みんなで席を移動していたからだ。
カバンを落とした音に気づいたのだろう。徹くんが僕に気づき、口角を少しだけ上げて、僕の方に向かってきた。
「君の席の横になるから、よろしくね」
徹くんが薄気味の悪い笑顔を浮かべている。それを見て、すぐにでも僕は学校から逃げ出したくなった……。
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