チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【36】続・12人の勇者、今ここに集結!【なずみのホラー便 第124弾】

なずみ智子

続・12人の勇者、今ここに集結!

【問題】


 その魅力ゆえに、数多の男を狂わせる星の元に生まれた町娘・ミレーヌ。

 魔王の城に拉致、監禁された彼女を12人の勇者ならぬ”12人の○○○○○”が救いに来てくれました。

注) ○○○○○に入る言葉につきましては、前の問題をご確認ください。

 ミレーヌは自分を救いに来てくれた12人の○○○○○どもに感謝することなど到底できず、泣き叫びながら逃げ出しました。

 しかし、ついに奴らに追い詰められてしまったミレーヌ。

 ……と、その時です!

 辺りを光がパアッと包み込みました。

 その光ののちに、姿を現したのは12人の男性天使――その顔面の端正さも肉体美もまさに最高級品質と言える麗しき男性天使たち――でした。

 天使の一人が言います。

「私たちも空の上より、あなたの身を案じていました。先ほど魔王が滅んだため、天使の私たちも魔王の城へと入ることができるようになったのです」

 ということは、魔王は何やら天界の者たちに対する結界でも張っていたのでしょうか?

 それはさておき、12人もの天使が絶体絶命のミレーヌを救い出しに来てくれたのです。

 「こうしてミレーヌは助かりました。12人の天使たちに守られ、魔王の城を無事に脱出することができたのです」と締めくくられるのかと思いきや、魔王の城から脱出することができたのは、ミレーヌと1人の天使だけでありました。

 しかも、その天使もほどなく息を引き取ってしまいました。

 さて、魔王のお城の中でいったい”何が起こった”のでしょうか?



【質問と解答】


キクちゃん : 天使さんまでをも虜にしてしまうミレーヌさんの魅力には驚きしかありません。天使さんたちが助けに来てくれたことは良かったのかもしれませんが、前の問題からも推測するように、聖女のごとき清らかな美貌の町娘・ミレーヌさんのモテぶりは尋常じゃないんですよね。いわゆる、一般的なモテ女とは次元が違っていて……果たして、彼女自身が天使さんたちの登場を心から喜んだのかどうかが鍵になる気がします。ミレーヌさんは天使さんたちの登場に心からの……といいますか、純度100%の感謝の気持ちを抱けましたか?


チエコ先生 : NOね。「純度100%」と、パーセンテージで聞いてくるとは、いい質問の仕方だわ、キクちゃん。12人の天使さんの登場に、ミレーヌさんは「とりあえず、○○○○○たちからは逃れられるかもしれない……でも、次はこの天使たちからも……!」と思ったのが本音よ。


キクちゃん : ……ミレーヌさんは、完全に男性不信になってしまっているんですね。気の毒なんて言葉なんて通り越してしまっています。でも、12対12での戦いの構図になったとしても、城を脱出した時点での生き残りが1人の天使さんだけっていうのが不思議ですね…………あ! もしかして、これは魔王が滅んだことで魔王の城自体も瞬く間にガラガラと崩壊していったのではないでしょうか?


チエコ先生 : NO。魔王が滅ぼされても、城が崩壊していくことはなかったわ。


キクちゃん : 崩れ落ちた瓦礫の下敷きとなって死傷者多数みたいな事態を想像してしまったんですけど、違いましたか。……うーん、そうすると、魔王の臣下にもミレーヌさんに心を奪われた者たちが数えきれないほどいて、その者たちが総勢24名の天使さんと○○○○○たちに一斉攻撃を仕掛けてきたんでしょうか?


チエコ先生 : NO。魔王の臣下にも、ミレーヌさんに心を奪われていた者は多数いたけれども、この問題には関係ありません。臣下たちだって主君を滅ぼされた後は、これからの自分たちの身の振り方を考えなきゃならないから、それどころじゃなかったと思うわ。この問題はもっとシンプルに考えてみて。キクちゃん自身の言葉の中に正解へとつながるヒントがあったのよ。


キクちゃん : もっとシンプルに、そして私は自ら鍵となる言葉を口にしてしまっていたんですね。……あ、もしかして”12対12での戦いの構図”になってしまったということですか?


チエコ先生 : 厳密に言うとNOよ。だけど、極めてYESに近いNOよ。


キクちゃん : ということは、12人の○○○○○と12人の天使さんの総勢24名で戦いあった末に、1人の天使さんだけが生き残ったんですね。


チエコ先生 : YES。正解よ。ちなみに、”それ”を提示したのはミレーヌさん自身だったのよ。彼女は”こいつら”から逃れたい。自分を守りたい。ただ、それだけだった……でも、12対12というチームでの戦いとなってしまったら、敗者側は全滅しても、勝者側には何人か残ってしまうだろうと…………だから、1対1の勝ち抜き式のトーナメントを提案したの。その結果、1人の天使さんが優勝したわけだけど、彼は戦いの最中に負った傷が元で、脱出後に亡くなってしまったの。


キクちゃん : そうだったんですね。どちらのチームも一時的に協力し合っていたものの、次はミレーヌさんを巡って殺しあう敵同士という関係に切り替わったんですね。○○○○○たちも魔王を倒しただけあって、身体能力は相当に優れていたと思われますし、勝手なイメージですが天使さんたちだって身体能力が劣っているとは思えません。戦いは苛烈を極めるものになったのは想像に難くありませんね。


チエコ先生 : ちなみに、この後のミレーヌさんは「そうか、”次も”こうすればいいのね」と一種の悟りを開いたらしいの。彼女は凝りもせずに自分に言い寄ってくる数多の男たちを集めては、勝ち抜き式のトーナメントを”幾度も”提案するようになってしまったわ。腕っぷしに自信がなかったり、さすがに命を懸けてまでは……という男性は最初から辞退するわけだからふるいにかけることができるし、後はトーナメントに出場することを選んだ男性同士で殺しあわせるだけ。優勝者にしたって、戦いで受けた傷の感染症で間もなく死亡したり、半身不随や言語障害が残り日常生活もままならなくなったり、はたまた、他の追随を許さぬ戦闘能力によって、かすり傷程度で勝ち抜いた男性がいた場合も、ミレーヌさんが彼をねぎらう意味で飲ませたお酒に仕込んでいた薬によって突然死したり……といったことになってしまったのよ。


キクちゃん : な、なんだかミレーヌさんのイメージが急に反転……と言いますか、最後のは明らかにミレーヌさん自身の手による殺人じゃないですか!


チエコ先生 : そうね。彼女自身は男たちが自分を巡って争うことに快感を覚えるというよりも、自分を守るための手段であったのよ。だからといって、ミレーヌさんがしていたことは、決して許されることではないわ。誰も信じることができず、愛することもできないミレーヌさんを求め続ける男たちの屍は、次々と積み重ねられていったわ……町の人たちも影で彼女のことを「ずっと魔王の城に監禁されていた方がマシだったんじゃ。それならば、これほどの数の男たちが命を捨てることはなかったろうに」「あいつは聖女じゃなくて魔女だ」「いや、魔女どころか、あいつこそが女魔王となってしまったんだ」と言っていたの。その後、ついに国までもが動くこととなったの。さすがにこの事態を捨て置けぬと思ったんでしょうね。ミレーヌさんは「男たちを惑わし決闘させた罪」により処刑とされるという最期を迎えたわ。



(完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【36】続・12人の勇者、今ここに集結!【なずみのホラー便 第124弾】 なずみ智子 @nazumi_tomoko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ