第6話 ここはどこ?

気が付くと村らしきところの道の端の木の根元で寝ていた。やけに柔らかい枕で寝ていたと思っていたらアリスの膝枕で寝ていた様だった。


「うおっ。すまない。いつの間にか寝ていた様だ。」


『構わんぞよ、旦那様。気が付いたなら家に帰ろうぞよ。』


「アリス。これから俺は貴様の事をそう呼ぶから、お前は俺の事をタケルと呼べばいい。わかったな。」


『わかったぞよ。旦那様。』


「・・・」


『あっ。わかったぞよ。タケル殿。』


「タケルでいい。」


『あい。タケル。』


そう言い合って俺たちは家に向かって歩き始めた?が、よくよく考えたら俺は家がどこにあるのか?わからない。とりあえず確認してみるか。


「アリス。俺は来たばかりで家がどこにあるのかわからないんだがどこにあるかわかるか?」


『タケルがいいと思った場所に家が出来るから自分の思う場所を決めればいいはずぞよ。』


へっ?俺が気に入った場所?どういう事なんだ?家を建てるにしてもすぐに出来るわけないはずだし、もう少し込み入って聞いてみるか?


「いや、家を建てるにしてもすぐにできるわけじゃないだろ。だったらどこかで当面暮らす家があるはずだろ。それを聞いたつもりなんだが。」


『何を言っておる。家など一瞬にて出来るではないか?』


「はっ?お前、何を言ってるんだよ。家という物は建てるのに数か月かかるものだぞ。」


『お、お前って(テレッ)。て、照れるではないか。あっ、というよりも何を言っておるのじゃ、家などすぐに建つではないか?ここでは邪魔になろうからこちらへ来るがええぞよ。』


そう言ってアリスに道の外れへ連れていかれ俺は驚愕した。


『ソウレント、メレント、インジャグレント。』


そうアリスが訳の分からない呪文を唱えたかと思ったら家が出てきた。しかも平屋で床面積が60坪以上ありそうな家だ。気になったので聞いてみた。


「いきなり家が出てきたが、アリス、これはお前が出したのか?あと、家の中を見てもいいか?」


『ムフフ、これはワシが旦那様と一緒に住むために構築した家ぞよ。おうおう、中も見て欲しいぞよ。』


俺は玄関を開けて驚愕した。おどろおどろしい程に桃色、ピンクの世界だった。頭を抱えながらリビングらしき部屋のドアを開けると二人掛け用のラブソファーにハート型のテーブル、ダイニングらしき方には壁から出ているダイニングテーブルらしき物がありその前には二人掛け用のチェア・・・完全に頭の中がピンクに染まっていそうだった。客間らしき部屋を素通りして寝室らしい部屋のドアを開けたら信じられない光景があった。まるで○○ホテルの様な装いを醸し出し、ハート型のダブルベッドがまるでカモーンと呼んでいるようだった。(行った事が無いので想像だが・・・)


『どうじゃ?ワシとタケルの愛の住まいは、気に入ってくれたかの?』


「却下、却下、却下だよ。」


『なぜじゃ、異界の世界の様式に併せて考えたのに何がいけないのじゃ?』


「外観以外すべてだよ。こんなところに住んでいたら変態と思われてしまうぞ。」


『完璧じゃと思っておったのに・・・だったらどうすればいいのじゃ?』


「取り敢えず外に出てから、この家はしまってしまおう。家に関しては俺が何とかするからお前は何も考えなくていいぞ。」


俺はあきれ果てて疲れをドッと感じてしまった。取り敢えず寝室は別にしようと心に誓った。


ほどなく歩き多民族が住んでいる様な村に着いたので、近くに歩いているうさぎの獣人に村長がいるのか尋ねた。


〈村長ですか?でしたらこの道をまっすぐ進めば大きな屋敷がありますのでそこが村長の家になりますよ。〉


「ご丁寧にありがとうございました。」


と丁重に礼をして大きな屋敷に向かって歩いているとアリスが聞いてきた。


『タケル、村長にあってどうするのじゃ?』


「家を建てるにしても一応村長の許可をとらないといけないだろ。建てた後にここはどうのこうのとクレームをつけられるのも嫌だしな。」


『なるほど。タケルはなかなかの策士だの。』


「ちょっと待て。その言い方は問題があるぞ。俺は何事も円満に済む様に考えているだけだ。策だのなんなのと言われる筋合いはない。」


『いやはや、すまぬ。ワシはタケルが連れ合いでよかった。』


そうこう言っている間に村長の家に着いたので声を掛けた。


「すみません。村長さんはご在宅でしょうか?」


そうすると奥から強面のちょっとヤバそうな狼の獣人らしき人が出てきた。


[なんぞわしに用かね?見かけぬ方よ。]


「ええ、すみませんがこの村に家を建てて住まわして頂きたいのですがよろしいでしょうか?」


[あん?家?何故に人族のあんたがこんなところに家を建てるんだね?人族なら人族の村へいったらどうだね?]


と言われ、何と答えようかと思案していたら


『村長。ワシのタケルが言う事に文句があるがかの?村を焼き払われて困っていたところを助けてやった事も忘れてしもうたのか?』


すると村長がギョッとしてアリスの方を見た。


[こっ、これはアリス様ではありませんか?こんなところに何かご用事でもございましたか?]


『村長。ワ・シ・のタケルが家を建ててもいいかと言ってるんじゃが、貴様はもしかして邪険にして断っておるのかのぅ?』


[めっ、滅相もございません。こちらの方でしたらこの村のどこに家を建てて頂いても文句も何もございません。しかしよろしいのですかな?確かにこの村にも人族はいますがすべて奴隷落ちした者ばかりですが・・・]


「奴隷落ちというのはどういった事ですか?」


[いえ、この村にいる人族は奴隷に落とされ尚且つ主人にも捨てられ住む場所もなくなってここへ彷徨い来た者ばかりですじゃ。ですので、身なりのいいこの方がここに住むというのが異質に感じて先程の様な言動に至り申し訳ございませんでした。]


「いえ、俺の事はいいです。では、俺たちがこの村に家を建てて住むのは許可を頂けますか?あと、仕事がなく生活に困っている方がいましたら民族関係なく紹介してもらえませんか?」


[はい。アリス様のお知り合いでしたらどこなりともお住まい頂いて結構です。また困っている者との事ですがどういった事でしょうか?もしも虐待されるというのであればご紹介はお断りしたいのですが・・・]


「はあ。虐待なんてしませんよ。あまり多いと皆は無理ですがうちで働いてもらおうかと思うのですが、いかがでしょうか?」


[構わないのでしょうか?でしたらどういった事が出来る者がよいかお聞かせ願えれば合った者をご紹介させて頂きますが・・・]


「一応、お伝えしますが困っている様な方であればこちらで指導もしますので構わないですよ。その代わり今伝えた様に生活に困っている方のみですよ。」


[わかりました。選別に幾日か頂けますか?家が決まりましたら一度こちらへ来ていただき場所を教えて頂けましたらお連れ致します。]


「了解しました。よろしくお願いします。」


「あっ、アリス。勝手に決めてしまったがよかったか?」


『ワシは、タケルがする事において何も問題は無い。というより、タケルは優しいのぅ。』


「何を言ってるんだ。優しくなんかないぞ。」


「あと村長、この村で一番住まいが悪いところを教えてもらえますか?我々はそこに居を構えようと思いますので。」


[わかりました。でしたら娘にお連れさせましょう。カナデ、カエデ少し来てくれ。]


村長は双子の娘を呼び、我々の向かうべき場所を連れて行ってくれる様頼んでくれた。


そのまま案内してくれたので俺たちは家があるのかどうかも怪しいところへやってきた。そこで双子の娘にこのあたりに住む者たちを集めてもらう様に頼んだ。






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