第5話 どうにかこうにか・・・

あのじじいに時間をもらったのはいいがいきなり過ぎて考えが纏まらない。

あの獣にしろ、女神を語る変なババアにしろ、一旦落ち着いて整理しないと始まらないと思い、一人思考にふける。


そう言えばあのじじい変なことを言ってたな?俺が惚れてた子はあの獣の尻尾の毛とか言っていたし、魂が呼び合っているとかなんとか・・・ただよく考えたらあの獣が人化すると確かに惚れていた子に似ているんだよなぁ。


まぁ、元の世界に戻ったとしても自分の思う様にならないのならこっちで好きに生きるというのもありかな。多妻制とも言っていたし浮気が咎められる事もないだろう。

しかしあの獣が許すかどうかも疑問だな。あとあのババアの件も考えないといけないのか?


そうこう考えている内にあっという間に時間が過ぎじじいがやってきた。


≪ふおっふおっふおっ、どうじゃな?考えは纏まったかの?アリスの事もそうじゃがセイの事も考えてくれたかの?≫


「おいっじじい、少し聞くがあの獣だが人化して絶対に戻らないのか?それとも何かの拍子に戻る事があるのか?」


≪おぉ、アリスの事か?人化した後の事じゃがどちらでもできるぞ。更に言えば貴様が人化や獣化を規制する事も可能じゃがどうするかの?≫


「俺が全てを制御するというのはおこがましいと思うので、本人も自由に出来る様にして尚且つ俺の方でもある程度制御出来る様にして欲しい。出来ればこちらに強制権を持てる様にして。それは可能か?」


≪問題ないのう。では、そのようにしておこう。あとはどうじゃな?特にセイの事などは?≫


「出来ればあのババアに関してはあまり近くにいて欲しくはないんだがな。ただそうすればババアは死ぬ事になるのか?」


≪う~ん、死ぬるというよりもあの森におる魔獣どのも苗床となるといった方がええかの。まあ簡単に言えば、犯されて孕ませられて魔獣どもの子を成すという事じゃな。≫


さらっととんでもない事を言い出しやがったよ、このじじい。それって下手したら死ぬよりもきつい事じゃないのか?


「で、その権限を俺に委ねるという事か?それってじじいの立場においてずるい事じゃねえのか?」


≪ワシはセイに対して今回の件で失敗をしたら許さんと伝えておいたから問題は無いがの。それにそうなっても本人の問題であって誰も貴様を咎める者もおらんよ。アリスも納得しておるでの。ただあの時貴様がセイについても時間をくれと言ってくれたのでの、ワシが勝手に期待しておっただけじゃよ。≫


「減らず口だな。まあいい、次の確認だ。ババアを引き取るにしてもババアの連れ合いを用意する事は出来ないのか?あと、俺達のところで暮らすにしてもこちらから接触を持たなければ会う事も出来ない様にするとかな。」


≪一つは可能じゃがもう一つは不可能じゃな。≫


「そうか、近くにいて会えない様にする事は出来ないか。」


≪いや、連れ合いを用意する事が出来んのじゃ。あの娘はポンコツじゃでな。誰一人相手になってくれる者がおらぬ。ワシが洗脳して連れ合いを用意したら周りから反感を買うのでできん。会えない様にするのは可能じゃでやっておこう。それについての確認じゃが、会えん様にするのは、貴様とアリス共にか?それとも貴様だけでええのかの?≫


「だったら、さっきと同じ様に俺の判断で切替出来る様に出来ないか?」


≪わかった、そうする様にしよう。≫


「最後に聞きたいんだが、俺はこれからどういう風に生きればいいんだ。食料にしても住む場所についても何も用意が出来ないんだが。」


≪住む場所、家、食料、金のすべてはワシが用意しよう。あと、貴様には悪い事をしたとは思っておるので、それなりの力を与えよう。なんぞ欲しい力はあるかの?≫


「欲しい力?だったら俺に周りにいる者たちを守る力が欲しいな。」


≪ほう、周りを守る力か?変わっておるの?ワシが与える力じゃからその国、その星の覇者にでもなれるのだぞ。興味は無いのか?≫


「全く以って興味は無いな。俺は自分が一番になんてなりたいとは思わん。家族が仲良く慎ましく生きていければ問題は無い。」


≪ふぉっふぉっ、気に入った。貴様にはワシが与えられる全ての権限の力を与えよう。出来ればこの世界を変えて欲しいが、好きに生きるがいい。あと、これを持っていくがええ。異界倉庫じゃ。この中に必要と思われる食糧、武具、作業用具等を詰めておくで後で確認するがええ。使い方は、右手で取り出し、左手で収納じゃぞ。あとは頼んだぞよ。≫


そう言ってじじいが消えた後、俺は意識が遠くなっていつの間にか気を失っていた。



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