もう少しだけ
修学旅行2日目は
「しょーがない。どっかに混ぜて貰おう。」
何か視線を感じて振り向いたら瀬良がいた ...瀬良がいたのだ。実は彼女は友達が多く、クラスでも遥と話すことが多いとはいえ、それいがいの女子と話いていることも良くある。だから、まさか同じく一人とは思わなかった。
「えっと...空も一人?」
「うん...信二と回るつもりだったけど、ほら..」
瀬良も似たような状況なのだろうか。
「じゃあ!その...」
もじもじしてこちらを見てくる。あーもう!可愛いな!流石にここで誘わなかったら男の名が廃るよな...
「一緒に...いこう」
もし嫌でなければと追加して、凄く弱気になってしまう。班に誘うときは、なんかくじ引きで全く話とこと無い人と同じに成るくらいなら少し話したことある人と一緒に成りたいってだけだけど?みたいなスタンスで誘えた。だが、今は状況が違う...違いすぎる!
「うん!全然嫌じゃないよ!こっちから誘おうと思ってたくらいだもん!」
「良かった~...ここで断られてたらもう立ち直れなかったよ」
お互い恥ずかしがりながら笑い合う。
「じゃあ行くか」
「うん!」
自由行動の時間は一時間半位だ。駐車場に再度集まって、昼を皆で食べたら帰宅という流れだ。
「とりあえずロープウェイだよな」
「そうだね、おおわくだににきたのに、谷を見ないで帰るなんて可笑しいよね」
ロープウェイを登った先にはお土産店等がある。だからたぶんそこで時間を潰せる。
「良いよねー、遥と信二」
「付き合ったらしいな」
「そうそう、私も恋したい!」
遠回しに俺のことが好きじゃないと言いたいのかな...
「今は好きな人居ないの?」
「あ、いや居るんだけど、なんというか私の中では恋は付き合ってから始まるものみたいなイメージがなんと無くあって」
そういう解釈もあるんだなあ...あれ?今好きな人居るって言ったよな...
「へ、へ~...居るんだ、好きな人」
「うん、そっか...やっぱり気付いて無かったんだね」
俺は信二ほど察しが良いわけでは無いから、そういうのは全くわからない。
「どんな人なのって聞いても良い?」
なんかもうどうとでもなれって気持ちで核心に触れようとする。
「えー、知りたいの?」
首が折れるくらい激しく縦にふる。
「んーっとね、なんか能天気というか、端的に言うとバカ何だよね。でも凄く優しいんだ。私がちょっと失敗して落ち込んでるときに皆はからかったけど、その人だけ心配してくれたりね」
すげえ良いやつだな
「あとは可愛いところもあるなあ。私服を照れながら褒めてくれたり、顔真っ赤にしながら班に誘ってくれたりしたよ。そんなに恥ずかしいなら来なければ良いのにね」
え...瀬良を班に誘ったのは俺だ...でもまだわからない。俺は彼女を慰めた記憶何て無い。私服はバスで褒めたけど、それと班に誘ったというのは去年などの可能性だってあるし...
「なあ、それって...」
「内緒!今は教えてあげない!だって空はバカだから!」
「...答えに成ってねえよ」
結局瀬良の好きな人が俺かどうかの確信は無い。
「まあでも、その人は私を慰めてくれたことなんて覚えてないだろうなあ...その人にとっては挨拶ぐらい人に優しくすることは当たり前だろうから」
その後なんか気まずくなって、会話が出来ずにいたらロープウェイに着いた。
中では二人きりだった。どんどん景色がよくなって来る。
「わあ...凄いね!」
「ああ、そうだな。綺麗だ」
何に対して言ったのかは、ヘタレな俺には言えない。
「ねぇ...さっきのことなんだけど」
何かを言おうとしながら振り向こうとすると、瀬良がつまづき転びそうに成ったから咄嗟に支えようとしたら、抱きついたような形になってしまった。
「あ、えっと...ごめん」
「ううん...大丈夫」
名残惜しいが、手を離して離れようとした
「もう...少しだけ」
「え?」
「あと少しだけこのままで居よ?」
それは今のこの状況に言ったのだろうか、それとも...
「そうだな、少しだけな」
恋の形は千差万別だ。行動がゆっくりな人も早い人も居る。
確かに信二達が付き合ったのは羨ましいし、俺もこの目の前の彼女と付き合いたいという願望はある。でも...
「本当に少しだけだから...長くは待たないよ?」
少しずつ...今まで通り少しずつ進展していく。恐らくこれからも...俺はやっぱりヘタレだから、今思いを伝えることは出来ないと思う。でも、自分で伝えたいと思っている。
「ちょっとだけこのままでいさせてくれ。これはこれで居心地がよくてさ」
俺達は目を合わすことすらできず。お互いの飛び出しそうな心臓の音を聴きながらゆっくり、ゆっくりと山頂へ...ゴールへと向かうのだった。
俺が初めて恋をする話 ハンバーグ @bargarkun
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