一番好きな君へ
「信二、いよいよだな」
俺達は夜ご飯を食べ終え、レクをやり、ついに劇の時間になる。空の言う"いよいよ"は
おそらくこの後のことだろう
ちなみに何で俺達のクラスだけ劇かというと、このご飯食べ終わったタイミングで一クラス1つレクリエーションを企画するというのを先生達が考えた。そして俺達は劇に
劇の内容は壇之浦の戦いだ
源頼朝役は空だ
劇は特に問題もなく終わる
空も冷酷でカリスマのある頼朝の役を上手く演じており誉められていた
後片付けをして、三十分後に入浴開始(クラスごと)で、それまでは自由時間となったので、俺は遥を呼び、人気の無いところへきた
「話って...何?ってベタな質問すれば良い?」
まるで緊張感の無いギャグを喰らい拍子抜けだ
「もうそれで良いよ。俺は言葉が上手くないから、ひねったことは言わない。俺は遥のことが好きだ」
単刀直入にそう告げる。俺はこれ以外の言葉が必要だとは思わなかったから、一番伝えたいことだけ伝えた
「ありがとう。凄く嬉しいよ、でも1つ聞かせて。どうして私なの?」
「言っても良いけどさ、小もないことでも笑わない?」
何かすでに笑われてるんだが
「いやごめん、さっき似たようなこと言われてさ。うん、笑わないよ。君が好きに成ったのはそんなに小さい器の持ち主なのかな?」
「あー...器は小さく無いけど、いじるの好きそうだから笑われるかもしれない」
でもほんとに弄られたく無いとき、ほんとに傷ついてる時は弄らない。人が傷つくようなことは言わない。そんな人だ
「もしかして呼び出す相手間違えてないかな?私はそんなにSじゃないよ?」
「知ってる。ドSでしょ」
「残念。超ドSでした」
一応言っとくと、実際そんなことは無いけどね?
「茶番はさておき、俺が遥を好きに成ったきっかけは劇の台本作ってるときさ、遥が休んじゃって俺が残りを作ったでしょ?
あのとき、遥は笑顔でお礼を言ってくれたんだ。」
「私のせいでごめんって言うのは好きじゃないから。だから、ありがとうを伝えた。
いや、伝えたかったんだよ」
そう、遥はこういう人なのだ。自分の気持ちを素直に伝えられる。言うのは簡単だが、行動に起こすのは難しい。
「そういう所を後に知ってさらに好きになった」
「後に?その時ではなく?」
「うん。俺がその時に思ったことは"笑顔可愛い"だった」
沈黙が走る。数秒後に爆笑された
「ほら、笑った。でもその顔が見れて良かったよ。めちゃくちゃ可愛い!」
「...そういってくれるのは嬉しいけど、なんかずるい」
絵に描いたようなすねてますって顔をしてる
「何が?」
「だって、信二無意識に可愛いとか言ってない?女の子はカッコいい信二に可愛いとか言われたら好きに成っちゃうよ?
あとなんか誰にでも言いそう何だもん」
「それは遥も?なら何度だって言うよ、遥可愛い。ていうか今のところ俺が可愛いと思うの遥しかいないから安心して!」
言ってて恥ずかしく成ってくるけど、目の前に俺以上に照れてる人が居るからなんか落ち着けている。
「ありがとう。でもさ、私はわからないんだ...信二のことが好きなのかが」
「そっ...か。わからないってどういうこと?」
「私は今まで恋をしたこと無いの。だから、信二のことをカッコいいと思うこの気持ちが、時々カッコつけてて可愛いと思う気持ちが、底無しに優しいと思うこの考えが、隣に入れて心地良いと感じる感覚が、目が合うだけで早くなる心臓が、恋なのかよく分からないの。だから、真っ直ぐ気持ちを伝えてくれる信二に、まだ自分の気持ちを説明出来ない私が出せる答えが...見つからないんだ」
長々語ってごめんね、とうつむきながらいう彼女の肩は震えていた
「これが逃げだってことは解ってる。でも、信二は大事な友達。大切な人。特別だからこそ、真剣に考えたいの。優柔不断で...ごめん」
何かをこらえ、目を合わせてきた
「大丈夫だよ。遥はさ、優しいから。優しいから答えが出せないんだよね」
気付いたら抱き締めてた。長Tしか上は着てないからか、胸元が次第に冷たく成ってくる。
「こんな私を好きになってくれたのにごめんね...
大丈夫って言ってくれる優しさを利用するようなことをして...ごめんね」
「そんな顔でごめんって言ってる遥より、ありがとうって笑顔で言ってくれる遥のことを好きになったんだけどなあ」
やっと笑顔に成ってくれた遥の目元は少し潤んでいた。
そして俺の一番好きな顔で、一番好きな言葉を言ってその場を離れていった。
「はあ...待つのって辛いなあ」
誰も居ない廊下で、濡れた胸元を見ながら呟いた。
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