小もないこと

「遥さ、空に告白されたらどうするか決めたの?」


私は二人しかいない部屋で恐る恐る聞く


「...わかんない」


ここを出る前に聞いてきた好きってどんな感じなのかと聞いてきた。それはつまり好きかもしれない相手が出来たということだと思っている。そしてその相手は信二だろう


「何を...迷ってるの?」


「好きがどういう気持ちかわからないの。それがわからないのに、返事なんて出来るわけ...無いじゃん」


あんなに真剣な顔で言われてと呟いた


「答えを出すときにしっかり悩めるのは遥の良いところだと思う。だけど、恋ってもっとアバウトな物だよ?」


遥は悩み始めたらたぶんもう止まらないから相談に乗ることにする


「アバウト?」


「そ、何となく気になり始めて、何となく仲良く成りたいって思う。そこから話したり話せなかったりで、上手くいったりいかなかったりするんだよ?」


とはいえ私もそんなに恋愛経験は少ないんだけどね


「つまり、好きになるのにどこが好きなのかを詳細に説明出来なくても良いってこと?」


「うん。好きだから好きなんだよ。カッコいいから、優しいから、ノリが合うからとかは後付け!」


あくまで持論だけどねと付け足しておいた


「...瀬良も、そうなの?」


「そうだよ。私が空を好きになったのだって、小もないことだから」


今思い出してもチョロいなと思う。


「小もないこと?」


「教えてもいいけど笑わない?」


力強く頷いてくれる


「月1くらいで清潔指導って有るじゃん?」


「ハンカチティッシュを持ってきてるかと、爪を切ってるかを保険委員会がチェックするやつね」


ちなみに事前に予告されてるハズなのに、必ずといって良いほど誰かしら忘れてくる


「でさ、結構前に私がうっかりしててティッシュ忘れちゃった時が有っただよね。その時に忘れたのが私だけで、回りの皆はからかってくるし凄く落ち込んでたんだ」


「そこでヒーローの登場?」


遥の口元は少しニヤついて居るけど、実際私にとってヒーローのような人だ


「そうそう。空だけだった、気にするなって言ってくれた人は」


「全然小もなくなんか無いよ!私はとっても素敵だなって思ったよ?」


少し怒ったように言ってくれた


「ありがと!今更空がカッコいい事に気付いてもあげないからね?」


「うっさい、そもそもまだ付き合ってすらじゃん」


お互い笑いあった


信二が遥に告白するのは劇の後というとこに成っている。遥もスッキリした顔をしている


もう答えは決まったのだろうか


「私決めたよ。信二になんて答えるか。私は...」


まって!と言い、言葉を遮る


「それは私じゃなくて、信二に言う言葉でしょ?終わったらどうなったか教えてね」


「うん、解った」


かくいう私は、せっかく同じ班になったのに空と対して進展もない...


「良いなあ」


遥に聞こえないように言った言葉を空だけには聞こえてて欲しいなと叶わない願いをした

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