100年

シヨゥ

第1話

「100年後には生きていないんだから楽に生きなよ」

「いや100年後に生きていないからこそ全力で生きないといけないだろ」

 なぜこんな流れになったのか。友達たちが生き方について対立しあっている。

「生きていないってことは100年も時間がないってことだろ? だったら1分1秒を大事にしてこの100年の歴史に自分を刻み込まないと」

 100年は短い派閥の有志。

「いやいや生まれてから100年も時間があるっていうことだよ。今30だから後70年もある。そんなにあるのに今から力んでいたらもたないって」

 100年は長い派閥の楽人。名は体を表すというがその通りだな、なんて思う。

「これから歳を重ねていけば体を動かすのも頑張らないといけなくなるんだからさ。今は体力を温存して楽に生きようよ」

「いやいや。今からバリバリ動いて体力をつけておかないと。それこそ体力不足で歳食ってからが辛いだろう」

「そういう考え方もあるのか」

 楽人は少し考えるように押し黙ると、

「有志って筋トレ好き?」

 と質問をした。何を言っているんだという顔をした有志だったが、

「筋トレ? 好きだぞ」

 と答えた。

「そっかそっか。筋トレは筋肉に傷をつけてその治りで大きくなる。たぶん楽人はそんな風に傷ついた分だけ大きく強くなれるっていう考え方なんだね」

 楽人らしい理解の示し方だった。

「そう……なのかもな。たしかに。考えたことはなかったけど」

「僕とは真逆だ。僕はいかに傷つかないか。いかに消耗しないか。そこに重点を置いているからね」

「お前は地力があるもんな」

「そんなことないんだけどね。まぁここの違いで僕らの意見はどこまでいっても平行線だろうね」

「平行線か。でも理解してもらえたようだしそれでいいか」

 話しはここまでといった風に2人の力が抜けたように見える。ちょっとピリピリした雰囲気も柔らかくなってやっと一息つけそうだ。そう思ったのもつかの間、

「っで、お前はどっちの考え方に賛成なんだ?」

 そう有志に質問を振られてしまった。これはまたどう答えたもんか。答え方によってはまた議論が白熱してしまいそうだ。

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100年 シヨゥ @Shiyoxu

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