第2話 回想

以前、青森だかどこかの秘境の温泉地に足を運んだことがある。僭越ながら、私には温泉巡りというなんとも粋な趣味がある。駅に着くまでのバスの中で好きな作家の本を読み、そういえばと、外の景色がいかにも自然と目に入りましたよという風に思い出したように顔を上げ、過ぎてゆく情景のどこに焦点を合わせたら良いか分からないまま、それが周りに勘づかれないように平然とし、また本に目を戻すのである。

温泉宿に着き、手続きを済ませると、私は直ぐに部屋に通された。厳かな雰囲気の和室に全くと言っていいほど似合わないバンクシアの花が生けられている。まるで英国の貴族のように優雅に香りを嗅ぎ、微笑んでみる。私は自分に苦笑し、どてらに着替え、早速名湯を体験しに部屋を出た。

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旅という名の @dazaIiiNA

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