旅という名の

@dazaIiiNA

第1話 偏見に溢れんばかりの

旅、とは如何なるものだろうか。

かつての名俳人、松尾芭蕉は「人生とは旅である」と遺している。それに対し、私にとっての旅とは、家とも家族とも離れ、一人で遠い遠いところへ行く、というなにも中身のないものである。なんの目的かは分からない。ただ、今いるところから離れ、真新しいスーツでも着るかのように、新生活にわくわくしながら孤独に過ごしていく、ただ、この場合の孤独とは自分から望んで手に入れた孤独である。それが旅だ。

そんな私も近頃、なにか特別なことがしたい訳では無いが、どこか遠くへ行きたい、と思うようになった。それだけではない。最近の私はおかしいのである。狂人である。急に花を愛でるようになった。あれほど嫌いだった虫に触れ、撫でるようになった。景色を見て、呆けるようになった。一大事である。たが、わざわざ直すのも億劫なので、このまま放っておいているのである。

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