第18話 平穏

「はーい、道を開けてくださーい。お鍋さんが通りますよ〜」


聖はそう言いながら、湯気が立つ鍋を慎重に運んできた。


「ヨウ、鍋敷きお願い」


「はいよ〜」


陽はテーブルの上にタオルを敷いた。その上に聖が鍋を置いた。


「いただきまーす」

「いただきまーす」


夕食が始まると聖が周りを見渡してすぐに口を開いた。


「ヨウ、トイレットペーパーのこと解決して良かったね〜」


「う、うん…」


陽は今回のことで聖に心配をかけたり、ノブナガやカナコ、広末さんを巻き込んでしまったことを反省していた。


「かなぶんとノブナガさん、元気だった?」


陽は苦笑いを浮かべた。


「うん、相変わらず暑苦しいくらい元気だったよ」


「ピピー!ヨウくん、お世話になったんだからそういう言い方はいけませんね」


「いや、わかってるよ。めっちゃ感謝してるって」


「うむ、それならばよろしい」


聖は目をつむり二度頷いた。


「かなぶんが、聖に愛してるって伝えてってさ」


聖は頬を両手で包んだ。


「いやーん、私も愛してるわ、愛しのかなぶーん」


そして遠くに向かって投げキッスをした。


「なんだよ、それ…


ノブナガさんも例の金色のジャケット着ててさ。聖がいないと知ってガッカリしてたよ」


「ノブナガさん、ウケる〜。私も2人に会いたかったな〜。


ねえ?京都まで車で行くとどのくらいかかるのかな?」


「うーん、5、6時間じゃないかな?


今頃、着いてると思うよ」


陽は何の不安もなく聖と何気ない会話ができるこの瞬間を、とても幸せに感じていた。


テレビではいつものニュースキャスターが喋っていた。


『正しくは「パンツ食ったことある?」ではなく「パン、作ったことある?」でした。訂正してお詫びいたします。


さて、次のニュースです…』

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