第16話 デンジャーゾーン

広末さんに電話をかけると陽の知らない洋楽が流れはじめた。


チャラッチャチャー🎶

チャッチャッチャチャー🎶


「古い曲かな?でも、ちょっとかっこいいな」


ガチャ


「やあ、ヨウくん、こんばんは。どうしたんだいこんな時間に?」


陽は広末さんが電話に出てくれたことが嬉しい反面、少し慌てた。時間が時間なので出ないんじゃないかと思っていたのだ。


「あ、すみません、夜遅くに…」


「いや、ぜんぜん大丈夫。嬉しいよ、久しぶりに声が聞けて。


元気にしてる?聖ちゃんも変わりない?」


陽は広末さんの優しい声を聞いて泣きそうになった。


「何かあったの?僕にできる事なら力になるから。遠慮なく言ってよ」


陽は大きく深呼吸をすると、これまでのことを話し始めた。



「そっか、そっか〜、う〜ん…どうしようかなぁ」


「すみません…本当に。僕は自分のバカさ加減に…」


「ヨウくん、ストップストップ。


そのくらい大したことじゃないよ。僕なんてもっととんでもないこと、たくさんしてきたからね」


広末さんはそう言って笑った。広末さんはどこまでも優しかった。


「よし、トイレットペーパーのことは僕の方でなんとかするから。ヨウくんは何も心配しなくていいよ。大丈夫、法案が施行されるまでには手を打つからね」


「あ、ありがとうございます」


「うん、聖ちゃんにもよろしくね。ゆっくり休むんだよ。おやすみ」


「はい、おやすみなさい」


あれほど不安だったのが嘘のように陽の心は落ち着いていた。陽は広末さんに感謝するとともに、いつか自分もこんな大人になりたいと思った。


「むにゃむにゃ、もう食べられませーん」


陽か寝室に戻ると聖は相変わらず幸せそうに眠っていた。


「なんの夢みてんだよ…」


陽は聖を起こさないように静かいベッドに潜り込んだ。

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