第15話 頼れる男
スースースー
陽の隣で聖は静かな寝息を立ていた。
「いいよな、聖は…。聖には眠れない夜なんてないんだろうな、きっと」
陽は身体を起こして、スマホを手に取った。
「ん?メールが来てる…日中はバタバタしてて気づかなかったんだな」
メールの差出人はクレジットカード会社だった。タイトルは、「クレジットカード利用通知メール」とあった。
「ちっ、今月も来ちゃったか…」
陽は舌打ちをした。生活するにはお金がかかる。家賃、水道光熱費、食費、スマホ代…手取り18万円の陽の給料は毎月必要経費でほとんど消えていった。
クレジットカード会社からの利用通知メールはもらって嬉しいものではなかった。
「あれ?なんだこれ?
…39,358円?」
メールには身に覚えのない請求額が記されていた。陽にとって突然の4万円近い出費はかなり痛い。
「いや、何かの間違いだろ?」
陽はしばらく考えた。そして…
「あっ!!」
陽は思わず声を出した。思い当たることがあった。
「くっ、トイレットペーパーを4万円も…何をやってるんだ、オレは…」
コンビニでトイレットペーパーを買い込む際、手持ちの現金がなくクレジットカードを使っていたのだ。
今月は完全に赤字だ。節約に節約を重ねて貯めた結婚資金で埋め合わせるしかない。陽はがくりと肩を落とした。
この4万円に加え、近日中にはトイレットペーパー課税法が施行されるだろう。
「どうすればいいんだ…」
4万円は仕方ないにしてもトイレットペーパーはなんとか処分しなければ…そう思った陽はベッドから抜け出した。
「誰か頼れる人はいないか…」
リビングのソファに座り頭を悩ませる。しかし、ただのサラリーマンの陽にはこんな時に頼れる人がいなかった。
あれほど輝いて見えたトイレットペーパーのオブジェが、今はゴミの山に見えた。
陽はソファから立ち上がると部屋の隅に追いやられていた新横浜プリンセスホテルを蹴り崩した。コロコロと転がるトイレットペーパーを目で追う。
その時、陽の頭に1人の男性の顔が思い浮かんだ。
陽は財布を手に取ると、中から1枚の名刺を取り出した。そしてしばらく名刺を眺めていた。
名刺には「広末龍二」と書かれていた。
陽はチラリと時計を見た。22時45分。
陽は少し悩んでから、意を決して名刺に記された番号をスマホにタップした。
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