第12話 電話
聖はきょとんとした顔で言った。
「ああ、うん、交換したよ。
だってヨウはエンボスの使ってなかったでしょ?わたし、ヨウが喜ぶかと思ってエンボスに交換したのに。使ってないのわかったからシングルに戻したの」
「え?そうだったの?
それにしても…よくオレがエンボス加工を使ってないってわかったな?」
「そりゃわかるよ。わたし、科捜研の女好きだもん」
聖は得意げに鼻の下を人差し指でこすった。
「…なんだ、そうだったのか」
「そうだよ。ま、エンボス加工でもシングルでもお尻が拭ければどっちでもいいもんね。
前にかなぶんが言ってたよね。フェラーリも軽自動車も見える景色は同じだって」
陽は少し考えてから言った。
「それ、なんか違くない?」
そして2人は笑った。
一呼吸置いてから聖は続けて言った。
「ヨウさ、トイレットペーパーこんなにいる?わたしたち、2人暮らしだよ?」
聖は部屋を見渡した。陽が買い込んだトイレットペーパーはほとんど手付かずのまま積み上げられていた。
「んー、そうだよな…そんなにいらないよな」
「そうだよ。だから、困ってる人にわけてあげよーよ」
陽は少し考えてから言った。
「わかったよ、聖」
「よかった。それでこそわたしが見込んだ男、浅間陽だよ」
聖は満面の笑みを浮かべた。
・
・
・
「あー、お腹いっぱい。余は満足じゃ」
聖は満足そうにお腹をさすった。
ブルルブルル
「聖、携帯鳴ってるぞ?」
「本当だ!!誰だろ?なほほんかな???
ん?あ、かなぶんだ!!」
それを聞いた陽は苦笑いをした。聖はスマホを手に取り慣れた手つきで画面をタッチした。
「もしもし、かなぶん?
こんにちは〜…いや、もうこんばんはかな?」
「もしもし、ひーちゃん、元気にしてる?
今日もかわいいね〜、顔見えないけど〜〜、アハハハハーッ!!!」
電話の向こうのカナコの声は、陽の耳にもはっきりと届いた。
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