第6話 絶対神
「ただいま〜」
時計は21時を過ぎていた。仕事を終え帰宅した陽を聖が迎えた。
「お帰り〜。今日はヨウの大好物のカレーだよ。すぐに温め直すからね」
陽は部屋着に着替えるとソファに座りテレビをつけた。陽は慌ただしくチャンネルを切り替えた。
「くっ、この時間…バラエティやドラマばかりじゃないか!!ニュースはやっていないのか!?」
「ニュースならNHKじゃない?」
カレーをテーブルに運んできた聖が言った。それを聞いた陽はチャンネルをNHKにした。
画面ではニュースキャスターが町中のスーパーやドラッグストア、コンビニからトイレットペーパーが消えたことを報じていた。
「ヨウの言った通りになったね…」
聖が呟いた。
「いや、オレじゃないよ。ンバッハブビーン様が教えてくれたんだ」
「でも、メーカーに在庫がたくさんあるみたいだからすぐにトイレットペーパー不足は解消するって言ってたよ」
「聖はお人好しだなぁ。メディアの報道なんて嘘ばかりなんだから。きっとメーカーにも在庫はないよ。混乱を落ち着かせるために嘘を言ってるのさ。
トイレットペーパーが不足してるなんて言わないよ絶対〜〜🎶」
「ふーん、そうかしら?」
「とにかく、ンバッハブビーン様のお告げ通りになっただろ?」
「うーん、まぁそれはそうね。
でも…」
「でも?」
「世の中にはスピリチュアルの能力を持っている人がたくさんいるわけでしょ?
なんでその人たちはこの騒動を予測できなかったのかしら?」
陽は得意げに答えた。
「そりゃそうだよ。
こんなこと予知できるのはンバッハブビーン様だけさ。
つまり…
ンバッハブビーン様こそがこの世の頂点に君臨する絶対神であり、最高位の霊なのさ」
「ふーん…
ヨウ、なんだか変わったね。昔はスピリチュアルなんか興味なかったのにさー」
陽は皿に残された最後のカレーをスプーンですくい口に運んだ。
「あー、うまかったーーー
やっぱり聖のカレーは最高だな」
「ふふふ、ありがとう」
今朝までの沈み気分とは打って変わり、陽の気持ちは高揚していた。
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