第5話 予言的中

翌朝…


「んじゃ、ひーちゃんは今日も元気に行ってきまーす。


ヨウ、今日は11時からでしょ?遅刻しちゃダメよー…って、ヨウは遅刻なんかしないね」


「・・・・・」


陽は黙ってベッドに潜っていた。


「なによ、返事くらいしなさいよねー。かわいくないんだから〜〜」


聖はそういうと部屋を出て行った。


昨夜、変な時間に起きたため、陽は寝不足だった。いや、聖がトイレットペーパーをエンボス加工からシングルタイプに交換していたことにショックを受けた陽は、その後もなかなか寝つけなかったのだ。


どのくらい時間が経っただろう?陽はベッドから出ると重たい足取りでリビングに向かった。水道からコップに水を注ぐと一息で飲み干した。


一人取り残された部屋はガランとしてとても寂しく感じられた。


「9時か…まだ早いけど、仕事に行くか」


食欲もなくやることもなかった。いや、やる気が起きなかった。朝食も取らず、陽はのろのろと身支度を整えると部屋を出た。


ガチャリ


鍵をかけ玄関に背を向けるとそこに一人の男が立っていた。


「ひっ!!」


陽は思わず声を上げた。


そこに立っていたのは…


そう文春だった。


「あ、浅間さんっ!!


あなたやりますね?


いったいどこから情報を買ったのです?」


陽は文春が何を言っているのかわからなかった。そして聞き返した。


「情報を買う?なんのことです?」


文春の目の色が変わった。


「とぼけるな!!


今朝になって町はパニック。コンビニの棚からはトイレットペーパーが消え、開店前のドラッグストアには長蛇の列。


あんな行列を見るのはドラクエ3の発売日以来だ!!


オレはあの朝、あなたがトイレットペーパーを大量に買い込んでいるのを見た。あれは明らかにこのことを予知していた者の行動だ」


「え?トイレットペーパーが消えた?」


「くっ、浅間さん!まだとぼけるのか!?」


陽は文春を振り払うと駐輪場に向かった。


「ま、待て!!


オレにも一袋、いや1ロール譲ってくれ!!


浅間さん!!いや、浅間様っ!!


エンボス加工じゃなくていい、ダブルですらなくてもいい!!


お願いだ!シングルでいいから分けてくれっ!!」


背後から文春の叫び声が聞こえたが、陽は構わずシルバーの自転車に乗ると、心当たりのあるコンビニやドラッグストアを巡った。そこには文春の言った通りの光景が広がっていた。


陽は不気味に笑った。


「フフフフ…


見たかっ!!


これがンバッハブビーン様の力だ!!


どうだ、聖〜〜っ!!!


ハッハッハッハッハー!!」

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