第4話 仕打ち

その夜…


陽はなかなか寝つけなかった。隣では聖が静かな寝息を立てていた。


「なんだよ、聖のやつ…」


陽は小さな声で呟いた。


しかし、陽は少し不安になっていた。今のところ世間ではトイレットペーパーが不足する様子など微塵もない。あれ以来、ンバッハブビーンが語りかけてくることもなかった。


「ンバッハブビーン様…何か言ってください」


とても眠れそうにないと思った陽はベッドを抜け出すとリビングに向かった。


プシュ!


冷蔵庫から発泡酒を取り出しソファに座ると缶を開けた。


リビングの真ん中に置かれていたトイレットペーパー製の新横浜プリンセスホテルは、部屋の隅に追いやられていた。


「やっぱり、新横浜プリンセスホテルで結婚式を挙げるなんて…身の程知らずかな。


やっぱりソ二ア22にしようかな。式後の両家の食事会はスシゾーにしよう。歩道橋渡ってすぐだからタクシー代節約出来るし。回転寿司なら安くてお腹いっぱい食べれるし。


いや、待てよ。ソニアっていくらぐらいなんだろう?」


そんなことを考えていると、ほどなく発泡酒が空になった。


「もう空か…さ、トイレにでも行って寝るか〜〜」


バタン、ジャー


「ふぅ…ん?」


用を足した陽の目に入ってきたのは、ホルダーにセットされたトイレットペーパーだった。


「これ?シングルタイプじゃないか???


まさか、聖…


自分が使ったあとにエンボス加工からシングルに交換したのか?


聖のやつ…


オレのお尻にはシングルがお似合いってことか!?」


陽は聖の仕打ちにショックを受けていた。


「オレたち、結婚しない方がいいのかな…」


陽は下半身丸出しで呟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る