亀の恩返し

大学生の美琴の家にはサリという亀がいた。サリは、美琴が8歳の頃の両親からの誕生日プレゼントにもらった亀でそれ以来美琴はサリの面倒をよく見ている。


美琴は1年前から近くのスーパーでアルバイトを始め、アルバイトも順調かと思った矢先、美琴より4ヶ月後に池端という女の子が入ってきた。彼女は美琴がミスをすると馬鹿にするかのように笑い、男性の前では笑顔でいて美琴がお客様の落とし物を上司に報告したのに、怒鳴って暴れるのではないかと思うくらい癇癪を起こして美琴を攻撃したりした。それだけでなく、何かと美琴に対して上から目線で美琴はアルバイトを辞めようか考え始めていた。

大学とアルバイトが休みの日のある日、美琴はベランダで自分のスニーカーを洗っていると近くで声がした。

「今日はバイト休みなのね」

周りを見たが美琴以外は誰もいなかった。

気にせずまたスニーカーを洗っていると

「美琴さん!美琴さん!」

また声がしたので、近くの水槽を見るとサリが口をパクパクしてこっちを見ていた。美琴はサリの水槽に近づき、

「まさかサリ?サリなのね!」

「そう。私だ。美琴さん、最近アルバイト辞めたいって思っているのよね?」

「うん」

美琴は頷いた。

「辞めたい理由は後輩の池端って子が原因だよね?」

「うん」

「美琴さん、私がその池端をバイト先から追い出して見せましょう」

「は?追い出す?いや、虐めとかそういうのは嫌よ」

「虐めだなんて根性悪い事はしないよ。美琴さん、私も後少しで人間でいったら還暦になるのよ。だから美琴さんに今まで育ててくれた恩を返したいの」

「サリ…」

美琴は嬉しさのあまり感極まった。

「疑ってごめん。その池端を追い出す方法って?」

「美琴さんが池端の事を池端がいない所で上の人に言う。それだけ!」

「それ当たり前な気が…」

「いやいや。当日は私も行きたい所だが、無理なので、美琴さんのお気に入りのキーホルダーに化けて上の人と池端に催眠術みたいなのをかけるわ。それでいい?」

「わかった」


美琴は次のバイトの勤務日、お気に入りのアニメキャラクターのキーホルダーに化けたサリを制服のポケットに入れ、同僚と池端に挨拶した後、店長に池端の話をした。店長は池端が今月で辞めると言い、池端も急に同僚達に泣きながら辞める事を告げた。


その事があってから美琴はサリに感謝した。

一方サリは、普通の亀の10倍長生きして美琴の家で暮らした。

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