マスク男子との出会い①

「あっ!唯叶と同じクラスだよ!3組!」

「まじだ。何年連続なん……」

「さぁ?数えてみたら?」

数えるのえげつなくなりそうだけど、やってみるか。

えっと、初めて同じクラスになったのが小3。

そこから小4、5、6……

中学でも3年間同じで、高校も3年間同じ……

「うわ、10年じゃん」

「うわとか言うな。そんなに同じクラスなってたんだ?」

「らしいよ」

実感無いんだけど。

まじか〜。

でも毎日一緒にいない時の方が違和感あって変な感じするかも。

俺の傍にはいつも静がいて、うるさく騒いでたもんな。

今頃静かになったら調子狂いそう(笑)。

気使わなくて済むから楽だし、相談も聞いてくれる。

俺、良い友達をもったなぁ。

「まぁ、どうせ今年までなんだから仲良くしよう」

「うん」

静が言った通り、俺たちはあと1年もしないうちに離れ離れになる。

誰かは大学に行って、誰かは就職する。

高校3年なんてそんなものだろう。

俺は進路考えてないから就職になるのかな。

勉強嫌いだし。

部活とかは好きなんだけどなぁ。

部活なんてできるの高3までだし、楽しむしかないよな。

楽しまなかったら勿体ない。

せっかくの高校生活なのに。

これは楽しんだもん勝ちだな。

「早く教室行こ!友達も同じクラスだからさ」

「分かってるって。本当、せっかちだな」

昔からせっかちなのは変わらないのか。

なんか安心。


「あ、静!おひさ〜」

「久しぶり!今年も一緒のクラスだね〜」

「だね!今年もよろ!」

わ〜。

女子のノリスゲーな。

ついていけんわ。

まぁ、ついて行かなくて良いんだろうけど。

「ねぇ静。一緒に来た男子誰?見ない顔だけど……」

「え?唯叶だよ。幼馴染みの」

「マジ!?メガネかけると雰囲気違くなるのか……全然分からなかった」

確かに俺は学校にメガネで来たこと無かったかもしれない。

俺だと分からないのも無理はない。

というか、コンタクトだったこと自体知られて無さそうだけど。

「あははっ、唯叶ってメガネ掛けてそうじゃないもんね〜。いつもはコンタクトなんだけど――」

静が説明を始める。

説明しなくてもいいと思うんだが。

律儀なだけか?

よく分からん。

すると、静が俺の方に戻ってきた。

「みんなが唯叶はメガネしてた方がイケメンだって言ってたよ」

「へーそうなんだ。別に興味無いけど」

「だろうね〜。でも、明日もネガネで来てね」

「はぁ!?」

嘘だろ……

明日もメガネとか、キツい。

運動する時はズレるし、勉強している時は縁が気になって集中できない。

今すぐにでもコンタクトにしたいぐらいなのに。

「だって、興味無いんでしょ?」

「そういう意味じゃ……」

静は少し頬を赤らめながらニヤニヤしてくる。

こういう時、静に何を言っても無駄だろう。

話を聞いてくれそうにない。

その時、先生が入ってきた。

初めて見る先生だ。

恐らくこのクラスの担任。

「えー、このクラスの担任になった高橋だ。この学年は初めましての奴が多いだろう。一年間よろしく頼む」

高橋先生はそのまま自己紹介を始めた。

結構長くこの学校に務めていること。

昔バスケをしていたという理由でバスケ部の顧問になったということなど、色々言っていた。

周りの人たちは興味がなかさそうだったけれど、先生は気にしていないように話を続けていた。

すると、静が俺に話しかけてきた。

「ねぇ、バスケ部の高橋先生の噂知ってる?」

「噂?」

そんなの知らん。

静みたいに友達多い訳でもないし。

本読んだり絵を描いたりする方がよっぽど楽しい。

「あー、知らないか。あの先生、影で熱血過ぎてウザイって言われてんだって」

それ、今言う必要あったのか?

もしかしたら先生に聞こえてるっていうのに。

静は別に気にしなさそうだけど。

「へぇ、そうなんだ」

特に興味はないから本を読みながら返事をしたら、静が少し拗ねた子供のような顔になったのが視界の端に写った。

普段、学校では子供っぽい所見せないのに。

急にどうしたんだろうか。

「本見ながら返事しないでよ」

なるほど。

静が拗ねたのは本を読みながら返事をしたからなのか。

そう思ったけれど、ふと疑問が頭をよぎった。

(なんで今まで拗ねなかったんだろう?)

俺は何回も同じような返事をしてきたはずだ。

なのに今回だけ拗ねた。

俺からしたら謎でしかない。

女子ってよく分からん。

意味不明の生き物としか思えなくなってきそう。

「まぁ、いいけど」

「いいんだ(笑)。拗ねたから謝った方がいいのかと思った」

「え……拗ねた……?」

「ん?自覚なしに拗ねてたの?子供みたいな顔して俺を見てたじゃん」

俺がそう言うと、静の顔が段々赤くなっていった。

もしかして本当に無自覚だったのだろうか。

「そ……だっけ……」

静が言ったあと、先生が「そういえば」と声を出した。

「今日転入生が来るからな。まだ職員室に来てなかったし、初日から遅刻かぁ〜?」

そう言うと先生が困ったような顔をしながら教室から出ていった。

転入生……

どんな人なんだろう。

少し気になるな。

転入生は女子なのだろうか、男子なのだろうか。

男子なら仲良くできたら嬉しいな……

あわよくば絵に描きたい。

俺なんて友達と呼べる仲の良い人はいないに等しい。

どういう人なんだろう。

俺は色々と想像を膨らませ、とても楽しみになっていた。

顔も名前も知らない転入生に会うことが俺にとって人生の分かれ道になる事を知らずに……

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