第88話

 デス4専用の結界の外。そこでも激闘が勃発しようとしていた。勝負を観戦していたシュガーのメイド2人がミルフィーの不審な行動に気づき彼女を抹殺するために動き出したのだ。


「‘クランプス!?え?まさかもう召喚されたの!?金本!!そいつは倒したらマズい事に…‘」


「やっぱり何かしてたわね」


「…クソ妖精はここで始末する」


「…っ!?」


 メイド達が振り下ろした黒い剣をミルフィーが受け止める。


「ぐっ…やっぱり素の状態だとこいつらの方が強いか……」


「ふっ!!」


 力で押し負ける前にミルフィーが手前の少女に蹴りを叩き込み無理やり距離を取る。


「___‘コンバージョン モードブラックドッグ‘」


 ミルフィーが即座に魔法を発動。その姿と装備が黒色に変化していく。


「換装魔法。しかも呪いの魔物の力を身に纏ってるみたいね。敵に回すと面倒で仕方がないわ」


「…妖精と言うよりも悪霊みたい」


「うるさいわね!‘妖精の私が妖精の力を身に纏って何の不都合があるってのよ?‘」


 ミルフィーの魔法、コンバージョンは特殊な魔法だ。取り込んだ魔物の魂の力を装備として身に纏う事が出来る。


「大体、あんた達だって本体はその‘見窄らしい魔剣でしょ?‘…‘私から見ればあんた達の方がよっぽど悪霊に見えるけど?‘」


 ミルフィーの異様な程耳に残るその挑発に姉の方のメイドがブチ切れる。


「み…見窄らしい…魔剣?……良い覚悟じゃない。じゃあお望み通り今すぐに焼肉にしてあげもごごっ!?」


「…ラビカ姉さん落ち着いて…「言霊」に当てられたら相手の思う壺」


 妹メイドがミルフィーに返答しようとしていた姉の口を無理やり閉じさせる。


「…ミルフィーからの魔力が込められた問いには答えちゃダメ。たぶん3回くらいで肉体のコントロールを持ってかれる」


「……」


(姉のラビカはアホだから初見殺しで体を操って同士討ちさせるつもりだったけど、やっぱ妹のネフォラがいると無理か。2人揃うとマジで面倒なのよね…)


 ラビカとネフォラはシュガーが所有する意思を持つ魔剣だ。自立行動が可能で戦いにおける遊撃の役割を担っている。だが肝心の主人が怠け者なのでメイド業務が本業と化しているのが悲しい実状だ。


「はっ…!?と、とにかくシュガー様の邪魔はさせないわよ!やっぱあんたにはここで消えて貰うわ!」


「…これ以上余計な口は開かせない」


(‘ごめん金本。これ以降アドバイスは送れそうもないわ。とにかく絶対に勝ってよ!私の借金のためにもね!!‘)


 ミルフィーが大助との会話を打ち切り戦闘に全神経を回す。そうでもしなければこの姉妹の相手をする事は出来ないのだ。


「上等!かかって来なさいよ!あんた達に妖精の本当の怖さを教えてあげる!!」



(ミルフィー?…結界の外で何か起きたか。まあここまでの成果だけでも上出来だ)


「まだまだ行くぞ!手札から「悪魔の上級ギフト」を発動!クランプスの宝箱を破壊してSPデッキから召喚条件を無視して魔物を召喚する!」


「何…!?」


 そしてシュガーの場に明らかに異質な雰囲気を纏った魔物が召喚される。


「こいつがおまえの切り札ってわけか……」

 

「その通り!「ヒュドラ」召喚だぁ!!」


「うははははは!!こいつは効果や戦闘に対する完全破壊耐性を持ってるんだ!つまりは無敵ってやつだよ!!」


「言っただろう?これでおまえは詰みだと!!ヒュドラ!妖精王女を消し飛ばせ!!」


 ヒュドラの攻撃で呪いの妖精王女が破壊される。


「……」


■金本大助 残り手札6枚 残りライフカウンターは1つ。


■シュガー・カフェリア 残り手札2枚 残りライフカウンターは4つ。

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