第59話
能力とは何か?気術とは何なのか?その答えについて金本大助は過去の経験から断片的に知っていた。「異能力」と呼ばれるその力。それはとどの詰まり魔法の亜種だ。金本大助が「魔法」を極めているように、この殺し屋も「異能力」を極めている。ただそれだけの話なのだ。
「その格好にその十手…江戸時代の岡っ引気取りか?…馬鹿が。時代錯誤にも程がある。そんな警棒以下の骨董品に何ができる」
「そうか?歴史ある武器ってのも悪くはないと思うが。本当は提灯とかも使いたいんだが、あれはあんまり実用的じゃなくてね」
「はっ…懐古主義者の考えなんぞ私には分からんよ」
ドカッ!ドカッ!ドカッ!と、連続で花火が空中で爆発する音が遠くから響き渡る。赤色、青色、そして緑色。その幻想的な光が互いの表情を照らし暴き出す。金本大助と女。その濁った両者の瞳はただただひたすらに相手の顔だけを見つめていた。
「それで……神への祈りは済ませたか?まあお前のような外道は間違いなく地獄行きだろうが」
「…悪いね。俺は「今」以外興味ないんだ。仏云云の説法はもう聞き飽きてる」
「そうか。…お前、何か勘違いしているようだな」
「?」
「___追い詰められたのは私ではなく、お前だ」
「!?」
今までとは比にならないレベルの強力な風が大助の体を吹き飛ばす。フェンスに当たりつつも体勢を戻そうと奮闘する大助の瞳に、指で作った銃口を彼に向ける女の姿。
「___‘風刃(強)‘」
「うおっ!?」
風の刃が大助の纏った魔力を貫通。その体が屋上からフェンスをぶち破り吹っ飛ぶされる。
「痛たたたた!…参ったね」
(物凄い威力だ。こりゃ場所取りミスったかもな)
痛みは感じる。だがその深い傷口はゆっくりと修復されていった。大助が戦いの前にこっそりと飲んでいたスーパーポーションの効果だ。
「___‘ドラゴン草<モードウィング>‘」
服の内側に仕込んでいたドラゴン草を手に取り食べる大助。即座に翼を生成し体勢を立て直す。
(地面落下でミンチ肉コースは避けられたか)
「やはり生きていたか金本大助!!」
「げっ!?」
猛スピードで風を纏い、横壁を走って接近してくる女の姿を大助が視認。
(俺を空中で追撃するつもりか。守りに入ると死ぬなこりゃ)
十手を構え直し横壁に足を擦りつけながら重心を補正。横壁を蹴りつけ駆け上がり大助の方から女に急接近する。
「ふっ!!」
「はああ!!」
女はナイフを。大助は十手を振りかぶりながら相手に叩きつける。金属同士がぶつかり合う音が響き火花が飛び散る。
(左腕が不自然に動いてる。…何かする気か)
「___‘風掌!‘」
「よっと…!」
叩きつけようとしていた暴風の掌底を完全に見切っていた大助。ジャストタイミングで攻撃を回避する。千載一遇のチャンス。蒼色の魔力が昂り白銀の十手が月の軌道を描き出す。
「___‘魔操術<露草>‘」
「がっ…!?」
流れるような動きで全体重を使い十手で足を絡め破壊。そのまま半回転の後に蹴りを女に叩き込む。極大の魔力を纏ったその絶技が女の風のバリアを貫通。腹部の骨をバキバキにへし折る。不意を突かれた女の体はホテルの壁を破壊し内部へと吹き飛んでいった。
「どうよ~ナイスカウンターだろ?」
十手そのものは特段強い武器ではない。その技も技術も相手を殺さず捕縛する事に重きを置いている。だがこの男の場合は違う。人体を効率よく破壊する鬼の如き技術。そこには「不殺」などという高潔な信念は欠片も存在していなかった。
(十手なら最悪1撃喰らっても何とかなるとか考えてたんだろうが…大甘さ。その1撃が命取りだ)
「さあさあ。もっと俺に見せてくれよ?あんたの力ってやつをよ……」
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