第47話

「ふいいい。酷い目にあったぜ……」


 翌日、両腕の調子を確認しつつ安堵の声を上げる大助。あの後、ご機嫌ナナメなラビをイチゴのホールケーキで懐柔しつつ強制送還。その後に慌ててフリーマーケットで購入していた中級ポーションを使用し怪我を治療したのだ。


「まさか俺自身が実験体になるとは」


 不安とは裏腹に格安で購入した中級ポーションの効果は本物だった。骨折レベルの怪我も飲んで数秒で完治する。見るものが見れば神の奇跡とも言える現象だ。ちなみにポーションの効果は小、中が重度の怪我の治療。上級以上からは肉体の欠損部分も治療可能になる。


「あれの開発を急ぐ必要があるかもな」


 人生何が起こるか分からない。回復薬は持てるだけ持ちたいというのが大助の心境だ。大助がアプリのクラウドファンディング機能を開き、出資中のプロジェクトの進行具合を確認する。


・プロジェクト名 世界を滅ぼした魔女の暇潰し


<ポーションの限界を超えた物を作ろうと思ってるわ。なんでそんな物を作るのかって?理由なんかないわよ。だって暇だし。人体実験とか諸々で費用がかかるから出資者を募集中よ>


「…お?なんか届いてるな」


 メールにはメッセージ共にサンプル品が送付されていた。


「試作品が完成したんで送るわ。名付けるなら「スーパー・ポーション」と言ったところかしら。これを飲むと5分間だけ小級ポーションの効果が永続するわよ。ただし欠損までは治せないから注意して」


(もう試作品が出来たのか。こりゃ継続して出資するだけの価値はある人物だな)


「これがスーパー・ポーションか。いいね。実に素晴らしい」


 アプリから取り出し、大助が直接手に持って確認を始める。


(液体の色が真っ赤だな。なんか禍々しい感じだが使えればいいか)


 ポーションの色は通常緑色だ。対してこのスーパー・ポーションの色はドロドロに濁った赤黒い色をしている。明らかに通常の工程では生み出せないような危険な雰囲気を纏ったポーション。大助のような頭のおかしい人間でなければこれを使おうとは思わないだろう。


「…マスター駆除終わった」


「おお!直ぐ行く」


 庭から聞こえたクラリアの声に反応し大助がスーパー・ポーションを倉庫に収納した。


(実験はまた今度だな)


 大助が家の庭へと向かい歩きだした。



「…害虫の駆除完了」


「おつかれさん。…というか何モグモグしてるんだ?」


 クラリアが口元をモグモグさせている事が気になる大助。つい余計な事を聞いてしまう。


「…これ?これは庭に大量に居たゴ〇ブリ」


「げっ!?」


(ぎゃあああああああああああ!?こいつスナック感覚でなんてもん食ってやがるんだ!?)


「…ん。意外とマイルドで美味しい。マスターも食べる?」


「いや、俺は遠慮しとくよ」


 ガチトーンで返答する大助だった。

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