第35話
「追い詰めました!クラリア追撃です!」
「…抜けられた。クロ、遠距離から弾幕貼って」
「うははは!絶対に逃がさないぞ!!」
少女達の楽しそうな声が部屋に反響する。
「ぬうううう!貴様らああああああああ!!」
(こ、こいつら…単体じゃ俺に勝てないからって同盟を組みやがったな)
大型の液晶テレビの画面内では、3人の少女に集団でボコボコにされている大助のキャラクターが表示されていた。大助がチョイスしたゲームは4人で同時に対戦する事ができるパーティーゲーム。操作もシンプルで大人から子供まで大人気。定番中の定番とも言うべき乱闘ゲームだ。
「愚か者どもが!この程度の浅知恵でこの俺に勝てると思うなよ」
どこぞの魔王のようなセリフを吐きながら大人げなく本気で少女達のキャラを排除し始める大助。最初の2戦こそ大人の接待プレイを続けていた大助だが、予想以上の学習能力を発揮するお助けモンスター相手に次第に四苦八苦。今はただ純粋にこの小童どもに負けたくないという理由で持てる知識を総動員し反則ギリギリの技も使い少女達を追い詰めていく。
「ああ!?ズ、ズルイですよマスター!?見方を盾にするなんて!」
「ラビ。お前にこの世の真理を教えてやる。…勝てば全部正しくなるんだよ!」
「…やられた。後はクロだけ。…絶対無理」
「むむむ!後は私に任せて…あれ!?もう死んでるだが!?」
ワイワイガヤガヤとした時間が流れていく。気が付けば時計の針は午後5時頃を指していた。頃合いだろう。タイミングを計って大助はゲームを終了させた。
「……自分の無力さを再認識しました。私はただのダメウサギです………」
「…今度は負けない」
「なあマスター。全力で壁をブン殴りたいんだけどいいだろうか?」
(うけけけ。せいぜいその敗北感を噛み締めるといい。そういう経験が人を成長させるのさ)
とはいえグズる少女達をこのままにするわけにはいかない。大助は次の一手を考え始めた。
(なんで俺がこんな保育士みたいな事を考えなきゃいけないんだ?…やめだやめ。子供なんてなんか甘い物でも食わしとけばいいだろ)
「ほら。おやつにケーキをやるからそれ食ってとっとと帰れ」
大助が冷蔵庫に保管していたホールケーキをテーブルの上に乗せ、お助けモンスター達に小皿とフォークを手渡していく。
「普通の大人ならこう言うだろう。「皆平等に食べましょう」とな。だが俺は平等という言葉は好きじゃない。何故ならば人生は自らの力で切り開いていくものだからだ」
「奪わなければ奪われる。このホールケーキというやつはそんな世界の縮図だと思っていいだろう。…さあ聞かせてくれ。お前たちは何個食べたい?」
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