第31話
「…マスター。こんな場所で何をするの?」
「ああ。これからヤバい草の実験をするんだよ」
「…ん。つまりマスターは人目に付かないこの場所で火星に旅立つということ?」
「それは別の意味のヤバい草な」
大助がスマートフォンの画面から火炎草とドラゴン草を取り出す。
(とりあえずこの火炎草から試すか)
「…火炎草。マスター。それを使うなら先に結界を展開したほうがいい。大きな音とかも聞こえなくなるよ」
「…結界?」
「…ん」
「___‘簡易結界形成‘」
「おお!?」
クラリアを起点にして半径100mほどの青色の円が形成される。
「…ラビが使ってる魔法をパクッた。獲物が逃げられなくなるからとっても便利」
「へ~。こりゃ確かに便利だな」
大助が半透明の壁を殴りつけてもびくともしない。強度に関しては相当のものだ。
(外の景色は真っ黒で見えないし、音がまったく聞こえなくなった。空間自体が遮断されてるのか?まあ実験には好都合だな)
「それじゃあまずはこの火炎草から。…てかどうやって使うんだこれ?」
「…ん。そのまま食べると火が吹けるらしい」
クラリアが手持ちの端末で情報を調べ、大助にアドバイスを送る。
「ナイス情報だクラリア!…モグモグ。て辛あああああああああああああああああああああああああああ!?」
「…っ!?」
あまりの辛さに強制的に開いた大助の口から、巨大な火の塊が飛び出す。ひゅるるっと海の方向に飛んだ後、物凄い衝撃音と共に海面に衝突した。そして大きな水飛沫が上がる。
「げほ!げほ! こりゃダメだ!味覚がおかしくなっちまう!…ていうか、どうしたクラリア?」
結界の端のほうで貝のように固まっているクラリアを見て大助はそう発言した。
「…火はちょっと苦手。でもさっきの魔法は凄かった。パチパチパチ」
クラリアが大助に称賛の拍手を送る。それを受ける大助の気分もまんざらではない。
「まあ、実験成功ってところか?」
(火の魔法は使えた。だが発動のたびにこんなのを食べてたら味覚がイカレちまうぞ。文字通り舌が焼けるような感じだったからな)
「そのまま使うとはちょっと危険だな。…ん~。これ使い易く加工とかできねえのかな?」
「…できると思う。ラビがそういうの得意」
「マジか。そんじゃ今度頼んでみるか」
大助が次の草を手に持つ。
「次はドラゴン草だ。…モグモグ。ふむ。味は普通だな。……あれ?何も起きねえぞ?」
(おかしいな?確か俺が見た説明だとドラゴンみたいな力が使えるはずなんだが…)
「……んん?こうか?こんな感じか?」
数々の珍妙なポーズを試し悩む大助。そのあまりにも異様な姿を見兼ねてか、クラリアがトトトッと大助に近づいてくる。
「…マスター。魔法はイメージが大事。あまり悩んじゃダメ」
「イメージ?」
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