第30話

「だがまあ、念には念を入れとくか」


 大助がスマホを操作し、1体のお助けモンスターを呼び出す。クロの件で偶発的に判明した事ではあるが、大助はお助けモンスターを現実世界に呼び出すことが可能だ。呼び出すことに関しては特にコストなどはないが、1度呼び出すとクールタイムとして44分間は帰還させることは出来ない。


 ポン!という音と共に、白緑の少女、クラリアが姿を現す。


「…マスター。久しぶり」


 トトトッと近づき、ごく自然に大助の首元を狙うクラリア。


「おう。久しぶりだな」


 それを見透かしていた大助が嚙みつきを躱し、頭突きで答える。


「…痛い。マスターはこういう事に興奮する変態さんだった?」


「どこの世界に自分から捕食されたがるドM野郎が存在すんだよ…」


「…ん。意外とそういう性癖の人間も多い」


「ぎゃあああ!?よせよせ!そんなおぞましい話は聞きたくねえぞ!」


 クラリアをやんわりと引き剝がし、様子を確認すると、服装が以前とは変わっている事に大助は気が付いた。以前のような民族衣装風の服装から、より近代的な服装へと変化していた。


「…マスター。私は再び進化した。褒めて欲しい」


「え?そうなのか」


 大助がステータスを確認すると、確かに種族名が変化していた。


・食虫植物 ラビットタイプ(擬態)

・喰らうモノ


かつて星々に住む生命体を貪欲に食らいつくした未知の生命体の末裔。彼女たちはその星に生息する動植物に擬態し情報を収集する。この生物が天使となるか悪魔になるかはパートナーに選んだ生物次第だ。


(怖っ!?え?じゃあこいつっていったい何なんだ?)


「…ん。早く頭を撫でてほしい」


 グリグリと放心する大助の腹筋付近に頭をめり込ませるクラリア。


(まあ、俺に被害が及ばなければどうでもいいか)


 自分以外の人間や動植物がどうなろうとも知った事ではない。それが大助の基本方針の1つだ。彼にとって重要なのはその物事が面白いかどうかだけなのだ。大助がこれでもかというレベルでクラリアを褒めまくる。


「おお良し良し!そのままどんどん成長して世界を面白可笑しくしてくれよなぁ!?」


「…んふふふ。分かった。いつかマスターには最高にハッピーな「世界」をプレゼントする」


 男の狂気と少女の狂気は共鳴し、ここに世界最悪の約束が結ばれた。


「…手始めにマスター以外の人間は皆殺しにする予定」


「それはダメだ」


「…あぅ」


 クラリアの頭部にチョップを喰らわせ説教を始める。人間がどうなろうが知った事ではないが、全滅は困る。そんな意味不明で独善的な持論を語る大助だった。

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