第22話

「ぐふふふふふ! 最高だぜ!!」


 大助が取引金額に200万を全額セットする。


「行くぜ!!」


 いつでも取引可能な状態で、大助が未来草を食べた。


「んぐぐ!?」


 未来の大助がWピースのサインをしていた。これは続行の合図だ。壊れた脳をポーションで修復し大助が全額を取引にブチ込む。


「行けええええええええええええええええええええ!!」


 グラフが急速に上がり下がりを繰り返す。そのたびに大助はこみ上げる吐き気を堪えていた。


(心臓に悪すぎる。頼むから早く終わってくれ)


 そして30秒後、貨幣の価値は大幅に上がった。つまり大助の勝利だ。即座に利益を確定する。


「やったあああああああ!!50万勝ちいいいいいいいい!!」


 大助が部屋の中をウサギのようにピョンピョンと跳ね回る。大助からすれば目が眩むような大金だ。それをたったの30秒で達成してしまった。騒がない方が無理という話だろう。


「マジで凄いなこの草。これ完全にチートアイテムだろ」


 大助は増えた掛け金を全額追加し、再び取引を続行する。


「とりあえず目標は1000万だ。やってやるぜええええええええええええ!!」


 大助が脳みそをオーバーヒートさせながら、順調に資金を増やしていった。



 数日後、そこには布団の中で脳の痛みに悶絶する大助の姿があった。


「…脳が!脳が痛いよおおおおお……」


 ポーションでも直しきれない幻肢痛とも呼ぶべき現象に大助は苦しんでいた。


(こりゃあんまり使い続けるとマジでイッちまうかもな。だがやっただけの価値はあった)


「んふふふふ……」


 大助の通帳に記帳された口座残額は3億円。税金で引かれる金額を考えても約1億強は手元に残る計算だ。


「なんか夢でも見てる感じだぜ…」


 大助の夢、労働からの解放という目的はほぼ達成してしまった。


「1億円で何をするか…高級な焼き肉屋にでも行くか?」


 そんなありきたりな考えが大助の脳内に浮かぶ。大助の貧弱な金銭感覚では大金の有用な使い方など思いつかなかった。彼からすれば「毎日外食できるぜ!ハッピーだよなぁ!?」という程度の考えしか思い浮かばない。だが金は有用だ。あればあるほど困る事などほとんどないだろう。


「全額銀行に預けておくのはちと怖いな。1000万くらいはタンス預金しておくか」


 ようやく体調が回復してきた大助がゆっくりとソファーへと倒れ込む。


「大金、本当に稼げちまったな」


 ボーと色々な事を考える大助。


(確か、普通の人間の生涯賃金が3億円ぐらいだったよな…)


「よっしゃ!明日からは自由な毎日が待ってるぜ!!」


 大助が大金を得て初めて行った行動。それは日雇いアプリをスマートフォンから削除する事だった。

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