【本のレビュー】 清村くんと杉小路くんと

中学校の時に流行っていたギャグ漫画。

内容はギャグ漫画なので、あまり語れない。

だけど流行っていた当時のことは語れる。


清村くんと杉小路くんと、という作品が、ぼく達にとって、どういった作品なのかについては語れるのだ。


最後には好きなキャラクターについて語ります。


中学校の時に、すごい勢いで流行った。ぼく達の周りだけで。

ぼくの中学校はヤンキーが多かった。

(急に自分語り?)

この作品が流行った空気を感じてほしいのだ。


いつでも窓ガラスは割れているし、踊り場でヤンキーがたむろしているし、授業中もヤンキーが出歩いていた。

そのヤンキーがぼくには鬼に見えていた。

ヤンキーじゃない人間には人権はなかった。

歩いているだけで、殴られた。

友達は言ったのだ。

「精神攻撃されるより、肉体攻撃されるほうがましや」

いや、殴られている時点で、羞恥心も攻撃されとんねん。


ぼく達には人権なんてなかった。

それでも清村くんと杉小路くんと、は面白かったのだ。


イメージだけど、ヤンキーの背中にはヤンキーとゴールドで書かれていたような気がする。

荒れた中学校。


鬼と目を合わせないように、ずっと下を向いていた。


その当時、beesブームがやってきた。

ウエストサイド(キンコン、ロザン、ランディーズ)が流行っていた。

フジワラやフットボールアワーや、今活動している芸人さんが、beesという劇場に所属していて、すごく流行っていたのだ。


ぼくはお笑いブームの波を受けた。

めっちゃお笑いが好きだった。


放送された全ての漫才を紙に書き写していたほどだ(重度のオタク体質)


それでも清村くんと杉小路くんと、の作品より笑った漫才はなかった。


授業を受けず、『ジョジョの奇妙な冒険』を読んだ。

その当時から、ぼくは教科書を開くという習慣がなかった。

みんなも同じように過ごしていたのに、こっそり受験勉強はしていたみたいだった。


学校は漫画を読みに行くところだった。

その当時、読んでいたのはサザンアイズやガッシュベルや天上天下。


朝のアニメショーではキン肉マンが再放送されていて、その放送が見終わってから学校に行くので、毎日遅刻していた。


それでも、清村君と杉小路君とに勝てる作品はなかった。


ぼく達の一等賞だった。


何度も何度も読み返して、どこが面白かったのか座談会が行われて、なぜ面白いのかの分析が行われた。


それぐらいに面白い作品なのだ。


みんなも歩いていれば殴られる中学生活を送っていたと思う。

ぼくは殴られなかったけどビクビクしていた。

犬が校庭に迷い込む回数より、バイクでヤンキーが乱入してくる回数の方が多かったように思う。


窓ガラスは割れ、一人で学校を歩いていると危険だから誰かと一緒に行動しなくちゃいけなかった。

ぼっち、という言葉はなかった。

あまりにも危険すぎる。

それはクマが出る森に、何も持たずに一人で歩いているようなものだった。


ぼっちというのは、恵まれた環境で発生するものだということである。


だけど友達が殴られても助けることはできない。

アワアワするだけである。


そこら中にアワアワする生徒が発生していた。


それじゃあ、ぼっちでもいいんじゃないか。

それは違う。

慰め合いながら帰らなくちゃ、心が死んじゃうのだ。



人生で一番戻りたくない環境だった。

ヤンキー以外の生徒には人権は与えらなかった。

それでも清村くんと杉小路くんと、は面白かったのだ。


どれくらい面白い作品か、空気感は伝わったでしょうか?

一枚絵がいいのだ。


一枚絵ってなに?


読んでない人には言えないのだ。

嘘。

清村くんのツッコミパートが一枚絵になって、100パーセント笑かしにくるのだ。


清村くんと杉小路くんは高校三年生である。

真面目そうな杉小路くんはサッカー部のキャプテン。

でもサッカーなんてした事がない。


高校三年生でサッカー部に入ってきた清村くんは中学校では有名なサッカー少年だった。だけど監督ともめてサッカーは辞めた。

そして彼はグレた。

ヤンキーになったのだ。

やめたサッカー部に入り、サッカーの面白さを取り戻す青春物語ではない。


サッカー部に入ったけど、サッカーなんて一ミリもしない。

人骨でサッカーをやっていた回はあったけど。


杉小路くんに清村君がイジられるのだ。

それを清村君がツッコむ。


わかりやすいキャラクター。

わかりやすいボケとツッコミ。


だけど、ちょうど芯を捉えて笑わしにくるのだ。


やっぱり、みんな杉小路くんが好きだったな。

飄々として、フザけている。

真剣にフザけている。

真面目にフザけている。


イジられる清村君も捨てがたいのだ。

ツッコミの圧が漫画からでも伝わってくるのだ。


ちゃんとボケを全て受けた後でツッコミを入れのだ。


安井やすおも好きだった。

家がないぐらいの貧乏。

彼は車で生活をしていた。

その車がフェラーリだった。

間抜けな奴だった。

嘘をつく奴だった。

愛すべきバカだった。


二度と中学校には戻りたくないけど、もう一度清村くんと杉小路くんと、を読み返してみたいな。


こんなにも面白い漫画を書いてくれた土塚理弘先生が大好きです。

あの当時は、すごく救われました。

絶対に読んだ方がいい漫画です。ぜひ読んでください。

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